活動報告・レポート
2025年7月1日(火)
高野山別格本山 總持院
高野山別格本山 總持院

高野山別格本山 總持院を訪ねて「細川護熙先生御奉納襖絵三十二面『四季山水花鳥図』」特別公開を鑑賞しました。總持院から案内をいただき本日の鑑賞に至ったものです。

總持院の説明については次の通りです。

総本山金剛峯寺の西隣『壇上伽藍』を前に控えた、弘法大師草創の地とも云われ往古の高野山を思わせる寺院のみが立ち並ぶ、閑静な本中院谷に位置しています。總持院は平安時代、久安年間弘法大師から第二十代目の山主、行恵総持坊の開基の古刹。代々の住職が同地において守り伝えて今に至っています。

高野山別格本山 總持院

特別公開されている「四季山水花鳥図」を宮田住職から説明を受けながら鑑賞しました。ふすまが32枚で完成まで約2年間を要した大作です。人が人生の中の2年をかけた作品ですから生命が吹き込まれていることを感じました。金箔から絵具の素材など厳選したものとし、下絵を作成してから住職と打ち合わせを行い、そこから作品として仕上げていった経過があると聞きましたが、そんな大作を鑑賞できることは贅沢な時間だと感じました。

ここで描かれている春夏秋冬は弘法大師が生きた四季と同じで、その心は、四季は移り変わっているので決して同じものはないこと。そして誰の下にも同じ季節が巡ってきますが、昨年と異なる四季を感じて生きることが大事なことだということ。そして季節はやがて去っていき、再び見ることはできないことを描いています。

高野山別格本山 總持院

日本人は四季を生きていますが、毎年同じ季節が巡ってくるものではないので、今を生きることが大事なことです。ここで弘法大師は真っ赤な太陽として描かれていますが、それは周囲を照らし私たちの命を護ってくれている存在として捉えています。

住職から「室内の電気を消すのでその状態で作品を見てください」と話があり、暗くした状態で見たところ、ふすまの太陽が浮かび上がり、また描かれている山脈も浮かび上がっているのです。つまり太陽と山脈の脇の部分は金箔なのでそこが光っているので太陽と山脈が輝きを与えられて浮かび上がって見えるのです。

住職は「昔は電気がなかったので電気を消した部屋で鑑賞することで昔と同じように鑑賞することができます。バックグラウンドを知っておくことや時代検証をした状態で眺めることが大事なことです」と話してくれました。

高野山別格本山 總持院

確かに電気を点灯した状態で鑑賞するよりも消した状態で鑑賞する方が、重厚感というか深みがでるのです。しかも強調したいものが浮かび上がり主題が明確になります。ここでは、太陽として描かれている弘法大師が山脈として描かれている高野山で開祖し、四季を通して、しかも時代を超えて照らし続けていることを表しているように感じました。

住職は「成仏は死んだ人に捧げている言葉のように聞こえますが、生きている人に対して言っている言葉です。般若心経は死んだ人に対して唱えているものではなくて、生きている私たちに生きることを伝えてくれているのです。つまり私たちに生き方を示してくれているのが般若心経です」と説明してくれました。

高野山別格本山 總持院

続けて「日本語は名詞と動詞の順番で意味を解釈しますから『成仏』は『仏に成る』と解釈すべきです。つまり仏とは特定の人物を指すのではなくて、世の中の真理に目覚めた人のことであり、心は何事にも乱されず、その智慧を活かして人々の苦しみや悩みを解決しようとする人を指しています。

成仏というとお葬式や死後の世界などを連想しますが、お釈迦さまの教えは、私たちがいのちを授かっているこの現世で、いかに悩みや苦しみから開放され、イキイキと生きることが大事なことだと伝えてくれているのです」ということです。

高野山別格本山 總持院

話を聞いて壁に掛けてある般若心経を見上げたところ「その書は加藤登紀子さんが書いたものです」と話してくれました。以前、ここに宿泊した時の書だということです。

ふすま絵の鑑賞と共に、宮田住職との懇談で大切な教えをいただきましたこと感謝いたします。