活動報告・レポート
2025年3月20日(祝・木)
避難所でのトイレの問題

能登半島地震以降、和歌山県議会では毎回のように避難所でのトイレの問題が議論されています。僕も令和6年2月県議会を始めとする機会に、避難所でのトイレ問題を取り上げていますが、先週末の「防災川柳表彰式」を契機としてこのトイレの問題を話し合いました。メンバーから避難所におけるトイレの問題の記事提供があり、私たちも議論を深めています。メンバーで話し合っている記事、「毎日新聞東松島(令和7年3月10日)」提供。

命を落とす危険も 繰り返される災害時の「トイレパニック」

水洗トイレは使えず、トイレは汚物の山に――。こうした「トイレパニック」は2011年に起こった東日本大震災など大災害の度に発生し、避難者を苦しめてきた。1995年の阪神大震災で指摘されるなど古くからの課題だが、昨年1月の能登半島地震でもトイレパニックは起こった。命と尊厳を守るための衛生的なトイレをどう確保したらいいのか。

政府は昨年12月、能登半島地震でのトイレパニックなどを受け、避難所運営のガイドラインを改定した。居住スペースの広さやトイレの個数などについて、最低限の基準やプライバシー保護などの観点で定めた国際的な「スフィア基準」に基づいて明記したのが特徴だ。

トイレに関しては、発災直後は50人に1基▽避難が長引けば20人に1基▽女性用は男性用の3倍の数が必要――などとした。政府は新たなガイドラインを避難所を設営する自治体に通知し、整備を求めている。

・仮設トイレ設置までなんと65日

東日本大震災では、広いエリアで停電や上下水道の故障により、水洗トイレが使えない状態が続いた。名古屋大学エコトピア科学研究所(現未来材料・システム研究所)が11年度に被災した29の自治体について、避難所に仮設トイレが行き渡った日数を調べたところ「3日以内」は34%、「1カ月以上」は14%、最も遅かったところでは65日に及んだ。

不衛生なトイレを使い続ければ、精神的負担に加え、感染症にかかったり、トイレに行く回数を減らそうと飲食を控えることで持病が悪化したりして命を落とす危険が増す。復興庁のまとめでは、岩手・宮城・福島県の3県で確認された「災害関連死」(12年3月時点)の要因のうち、最多はトイレを含む「避難所のストレス」で3割に上った。

・トイレパニックは能登半島地震でも発生した。

昨年2月にNPO法人日本トイレ研究所(東京都港区)が被災した石川県内の10カ所の避難所でトイレの状況を調べたところ、仮設トイレの設置が最も早い避難所で3日以内、最も遅かったところでは15日以上かかった。

設置された仮設トイレの85%が和式で、段差が大きいなど使いにくいことから、高齢者が転倒してけがをした事例もあった。携帯トイレなどの活用はあったが、便器から排せつ物があふれ不衛生だった避難所もみられたという。トイレ研究所代表理事の加藤篤さんは「東日本大震災で避難所のトイレが問題となっていた教訓を備えにいかせていない」と指摘する。

同研究所が昨年5〜7月、災害時のトイレ対策について全国379の自治体に聞いた調査では、「災害時のトイレ確保・管理計画を策定していない」自治体は72・3%に上った。「トイレ対策の全体統括責任者(部署)を決めていない」(55・4%)も過半を占め、対策が後手に回っている実態が浮き彫りになった。

大規模災害への備えとして加藤さんは、災害用トイレの備蓄推進▽運用のため司令塔となる人材の育成▽対策マニュアルの策定――が急務と説明する。政府が示したガイドラインについて「数値は参考的な目安。被災者が安心してトイレを使えているかどうかの確認が重要だ」と話し、利用者目線の必要性を訴える。

災害に備えて避難所用にトイレを準備しておく必要性は県議会を始め、県内市町議会で議論が交わされていますが、現実問題としてトイレトレーラーを準備している地方自治体は少ないと思います。地方自治体によって予算の問題なのか、危機意識が乏しいのか事情は異なると思いますが、非常時には避難所に多数のトイレは絶対に必要となるものです。

しかも清潔できれいなトイレを準備できないと、記事のタイトルにあるように「命を落とす危険」や繰り返される災害時の「トイレパニック状態」に陥ることは必至です。過去から指摘されている懸案ですが、改善できずに先送りされていることに危機意識の欠如を感じます。県議会においても、「防災川柳」を主宰している防災用品研究所においても必要性を訴えていく予定です。