
書家の北原美麗さんのコンサートに行ってきました。会場は和歌浦の純喫茶リエール、書家でありながら歌も歌う北原さんのコンサートを駆け付けた皆さんと一緒に楽しみました。
今回のテーマは「昭和の歌」で、同世代の人は誰でも知っている選曲をしてくれたので、あの頃を思い出しながら聴き入りました。
北原さんは昭和を振り返って「携帯電話もなく、メールもLINEもなく通信手段は限られていましたし、文字を書くことは当たり前の時代でした」と話してくれたように、当時と比較して利便性は格段に良くなっています。
また「今の人はテレビを見ていないけれども、私たちの時代はテレビが娯楽であり情報を得る手段でした」と言ったように、学校の話題の一つに「昨日のテレビ番組」の話があり「週末のテレビ番組」の話がありました。当時はテレビを録画する機器はなく、見逃せば見られない時代だったので、放送時間にはテレビの前にいなければなりませんでした。テレビは娯楽の中心だった時代が昭和です。そんな懐かしい昭和の歌を歌ってくれました。
ところでコンサート会場の純喫茶リエールは歴史ある建築物で、郷土の偉人である陸奥宗光伯の従兄弟で第二代農林大臣だった岡崎邦輔の別荘でした。僕の高校の担任の岡崎先生と一緒に行ったことがありますが「岡崎家の別荘だったところです」と何度も聴いていました。
ここで岡崎邦輔について少し記します。
「明治24年に陸奥宗光伯の議員辞職に伴う第1回衆議院議員総選挙補欠選挙で衆議院議員に初当選、以後、10回の当選を果たしています。立憲政友会の結成などに活躍し、大正14年に農林大臣を務めました。
一方、実業家としての顔もあり、渋沢栄一らとともに京阪電気鉄道の設立に関わり、大正6年には同社の第3代社長に就任しています。社長在任時には、大阪−和歌山間の新たな鉄道路線開設にも尽力し、後にJR西日本阪和線となる阪和電気鉄道の設立に大きな役割を果たしています」。
政治家であり実業家でもあった岡崎邦輔の銅像は、現在も和歌山市三木町に設置されています。

さてコンサートに戻ります。北原さんは書家なので、コンサートの途中、書道のパフォーマンスを行ってくれました。参加者の中から二人の好きな字を、その場で書くパフォーマンスです。色紙にお二人の座右の銘を書いてプレゼントしました。
北原さんは「日常において書く機会は少なくなりました。ほとんどパソコンで書くので、書く機会は減っていますが、書く人が少なくなっていくから書道は重宝されると思います。書ける人が少なくなっているのですから。上手下手は関係ないので、書くことを大事にして欲しいと思います」と語ってくれました。
なるほどと思いました。一般的に書く機会は減るので書道人口は後退していくと思う反面、上手に書ける人が少なくなっていくとその価値が高まることもあります。デジタル化が進展していく中でも書道家や画家はなくならないでしょうし、必要とされ続けることだと思います。
ところで書のパフォーマンスの中で、字の書き方の基本の一つを説明してくれました。
「日」の文字は縦の線を強く書き、横の線を軽く飛ばすように書くことが基本だそうです。
字の縦の線は力強く、横の線は飛ばすように書くことで強弱がつけられて格好良く見えるのです。ちょっとしたヒントで上達できそうに思います。プロの指導は分かりやすく、ワンポイントレッスンをしてくれるので覚えられます。
今回、歌と書の両方を同時に楽しめるコンサートになりました。歌と書のパフォーマンスを同時に行うコンサートは、北原美麗さんだけだと思います。ここにしかないコンサートを楽しめたことに感謝しています。