活動報告・レポート
2024年11月21日(木)
視察研修
視察研修

福井県にある「若狭湾エネルギー研究センター」を訪問しました。この施設はエネルギーに関する研究開発を推進し、わが国の産業への波及を通じて活力ある地域社会を作ることを目的にしています。このエネルギー技術の応用できる範囲は、宇宙分野、レーザー分野、医療分野そして育種分野だと聴きました。

これらの分野に生かせる技術の研究は、マイクロ波イオン源イオン注入装置、タンデム加速器、およびシンクロトロンの加速器を組み合わせることで、水素やヘリウム、炭素などをイオン化し、ビーム状にしたものを低エネルギー領域から高エネルギー領域まで加速することで、これらの分野に利用することが可能となります。

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医療分野では、粒子線がん治療高度化のための基礎研究につなげていますし、育種分野では植物や菌類の品種改良などにこの技術を生かしています。

野菜の品種改良に関してはイオンビームを照射することで野菜のDNAを傷つけ、復元するときに遺伝子の組み換えが起きるので、新しい品種が生まれるというものです。但し、どのような品種ができるのかは事前には分からないので、商品化するまでには実験を繰り返すことになります。どのような遺伝子組み換え結果が現れるか分からないことから、数多く実験を繰り返すことになりますが、イオンビームの照射により新しく生まれた野菜は、例えば甘みが加わったり、繊維が少なくなり食べやすくなったりします。これらの野菜は、既にどこの市場でも売っているので私たちが日常で食べています。

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また宇宙分野では、宇宙用機器・材料の評価技術開発を行っています。地球上の素材が宇宙に打ち上げられた時、宇宙線の影響をどの程度受けるのか検証しています。半導体などの電子機器は、宇宙線に晒されると故障するなどの影響を受けますが、事前にどのような変化があるのか、破壊されるのかなどを把握することで未然に対応することが可能になるそうです。もちろん、この装置はアメリカや中国にも数多くあり、国の宇宙技術開発につなげているようです。

日本の先進的な技術力を高めるためにも、必要な施設だと感じました。科学技術、中でもエネルギー技術は生活に欠かせないもので、私たちの健康を守ることや命を守ること、食べやすく、おいしい野菜を作ることなどにも貢献していることが分かりました。

基礎研究をこれらの分野に応用することで、私たちの生活を豊かにしてくれていることに感謝したくなりました。

続いて訪問した「原子力緊急事態支援センター」は、福島第一原子力発電所事故がきっかけで設立されました。目的は原子力災害が発生したときの支援体制を確立することで、高い放射線量下で高度な災害対応が可能となる世界最高レベルの災害対策組織として整備されたものです。

拠点は福井県美浜町に置いていますが、北海道から九州までの原子力発電所で緊急事態が発生した場合、直ちに現場出動を行い、現場の状況の偵察、放射線量率の測定、そして瓦礫の撤去など事業者と協働して緊急応対活動を行うことを使命としています。

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組織を設立してから以降、一度も現場出動した事はありませんが、緊急事態に備えた組織なので出動しないことが良いことだということです。福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、この研究支援組織が設立されていたのです。

社会では何か大きな事象が起きると、私たちの知らないところで国や企業がその対策を講じています。巨大災害などが発生し事故となった結果を受けて対応した事例は、報道されることも少ないように思います。今回視察した施設は原子力事故が発生した場合に備えているので、出動することがなくても日常の訓練を行い、有事に必要な機材を揃えているなど、福島第一原子力発電所事故の教訓を生かした組織であることを知りました。

社会は生き物のように変化しているものだと感じました。