活動報告・レポート
2024年10月9日(水)
建設委員会視察二日目
埼玉県川越市

建設委員会視察二日目は埼玉県川越市を訪れ、歴史的景観を生かしたまちづくりの説明を受け川越市の歴史とまちづくりについて学びました。

川越市は1638年、寛永15年の火災により町が消失し、その時に蔵、つまり水槽のある家屋が残った教訓から、蔵のある家屋が建築されてきた歴史があります。その建物が現在の中心地の町並みを形成しています。その伝統的な建造物群を保存するため、保存地区を設けてまちづくりを行っています。

このまちづくりの中心は昭和62年に発足した「一番街商店街 町並み委員会」で、住民が主体的にまちづくりを進めるための諮問機関です。

この「委員会」は元々、昭和58年に発足した「川越蔵の会」が母体となっており、この組織は商業活性化による町並みの保存を目的としたものです。この会が発展し、委員会を発足させ、昭和63年に「一番街町づくり規範」を制定しています。

この規範は地元が定めたまちづくりのルールブックのようなものです。基本原則は、歴史的建造物は保存すること。新築などの場合、歴史的な様式で立てるときは、その様式に準ずること。安易な模倣は避けてきちんとしたデザインを考える原則があります。但し一般的なガチガチに縛る規制ではなく、創意工夫を促す67項目のまちづくりの原則を記した原則集の性格となっています。

この「川越 町並み委員会」は、商店街や地元自治会、「川越蔵の会」などが主要メンバーで、オブザーバーとして川越市や川越商工会議所が加入しています。

そしてこの地区内における建築行為の流れは、建築計画の相談、川越市との事前協議の後、「川越 町並み委員会」との事前協議を行うことになっています。法律でもない、条例化もされていない民間の規範が、市の建築計画の協議の中に組み込まれているのは極めて珍しい事例です。

埼玉県川越市スターバックス

ここで珍しい事例の代表例がスターバックスです。私たちが見慣れている店舗と異なり、川越市の古い町並みに溶け込んだ古風な店構えとなっています。当初、スターバックス側は日本的なクラシカルな外観にはかなり難色を示したようですが、「川越 町並み委員会」と何度も話し合いを繰り返し、川越市の町の景観にマッチした店舗を作ってくれたのです。このスターバックスは2020年に訪れるべき世界のスターバックスの20店舗の中の一つとして選ばれています。

川越市役所で説明を受けた後、伝統的建築物群保存地区を歩いて見て回ったところ、平日ですが観光客やインバウンドのお客さんで賑わっており、それぞれの店の前で記念撮影する姿が見られました。

スターバックスを訪れて外観を見た時、「こんなスターバックスがあるんだ」と思いましたし、店内に入っても他のスターバックスと異なり、洋風でありながら和を感じる作りになっていました。

埼玉県川越市スターバックス店内

このスターバックスで珈琲を飲むために訪れる人も多いようで、地元の商店と共生している姿が見られました。この通りは地元の方や観光客が大勢歩いていましたが、平日の地方都市でこの賑わいは珍しいことだと思います。統計を見ると川越市の観光客の入り込み、数は700万人を超えており賑わい創出の成果が出ているようです。その内、インバウンド観光客は61万人もあり、主にアジアから来ていると説明がありました。

関東では鎌倉が歴史的な観光地として有名ですが、今では川越市のこの通りも外国人観光客の人気のスポットとなっています。この事例は歴史的建造物の保存と継承だけではなく、賑わいを創出して次の世代につなげる取り組みであり、私たちのまちづくりの参考となるものです。