本日から三日間、県議会建設委員会の視察に向かいます。初日の今日、紀の川インターチェンジ路面変状の現場と亀の瀬地すべり対策の現場視察を行いました。
1.紀の川インターチェンジ
京奈和自動車道の紀の川インターチェンジの変状対策について視察を行いました。現在、路面変状が発見された以降、紀の川インターチェンジは閉鎖されています。これは令和5年12月に市民からの通報があり現場で路面変状を確認し、道路防災ドクターが現地診断、その後、ボーリング調査、動態観測などを行い、対策検討委員会で方針を決めた後、復旧工事を行っています。
紀の川インターチェンジの下部を通る紀の川市道に隣接した、ため池の水位を下げた際に補強土壁背面の盛り土内に残った水圧と、盛り土の土圧が補強土壁の抵抗力を超えたために盛り土内に変状が発生し、路面に亀裂が発生したと原因を突き詰めています。
そこで補強工事は、京奈和自動車道の法面の補強土を撤去して新たに軽量盛土工によってランプを構築することにしています。順調に工事が進むと紀の川インターチェンジは令和6年度に復旧できる見込みです。
この復旧工事では、下部への圧力の軽量化を図るため軽量盛土材のEPSを利用しています。これは土よりも相当軽い素材なので、今後の地滑りの防止につながります。また紀の川市道の地すべりを抑止するための恒久対策として、押え盛土工法を実施します。押え盛土工法はため池内に施工するため、水抜きが可能な秋以降に実施する予定で、令和7年下期完成を目指しています。
仮に道路を輪切りにして横から見たとした場合、道路形状が台形になっているのは土の盛り土で、四角形になっている場合は軽量素材であるEPSを使用しています。コストはEPSの方が高くつくので、現場の状況や必要な強度を考案しながら採用することにしています。
今回の現場で使用したEPSは1メートル× 2メートル高さが50センチの1立米で、材料費は30,000円だそうです。土よりも高額なので費用対効果を勘案してこの工事に採用を決定しています。
2.亀の瀬地すべり対策
続いて、大和川の亀の瀬地すべり対策事業について説明を受けました。
大阪府と奈良県の府県境の大和川盆地から、大阪平野に流れ込む狭窄部が亀の瀬と呼ばれています。この地滑りが起きている範囲は1キロメートル四方で、硬い岩盤の上に柔らかい土が堆積し、またその上に硬い岩盤ができ、その上に柔らかい土が堆積している地質のため、雨水などを吸収すると柔らかい土が硬い層の上から滑り、それが地滑りとなっています。特に昭和42年の大規模な地滑りは、上流と下流に大きな被害をもたらしました。
そこで国が直轄事業として亀の瀬の地すべり対策工事を行うことになりました。これまでの総事業費は約1,000億円ですが、もし地すべりによって大和川が堰き止められた場合の想定被害額は約4兆円だそうです。奈良県と大阪府、そして関西の安全と経済を守るため、国土交通省が工事を担当しています。
工事を行った結果、現在まで亀の瀬ではデータを観測していますが、地すべりを抑えられています。地すべり対策の成果のあった事例として全国から注目を集めており、インフラツーリズムの代表的な地点となっています。
また地元の方々の協力を得て、地すべりを止めていることを売り物とした商品も販売しています。地元が商品開発したものを国土交通省の展示室で販売する事例は極めて珍しいことで、地域共生の参考になる取り組みです。例えば亀のコーラ(亀の甲羅)はネーミングも素晴らしい商品です。
説明を受けた後、地すべり対策工事中に発見された旧大阪鉄道亀の瀬隧道の跡を視察しました。鉄道トンネル内のレンガ積みの壁と天井は珍しい地下空間で、インフラツーリズムのアイテムとしてプロジェクションマッピングを行っています。ここでは地すべり工事や亀の瀬の歴史などを確認することができます。
今回、地元の国土交通省の職員さんから説明と案内をしていただきましたが、事業に賭ける強い責任感と熱意、強い郷土愛を言葉から感じました。熱意を持った説明は聴く人の心に届きます。
今回のような地すべり工事で動きがあるのは地中の工事のため、外部から見ることができません。見えないものを説明することはテクニックが要りますが、まるで地中に入ったかのようなイメージが湧いてくる見事な説明でした。これからも国土交通省は地域の安全のために尽くしてくれると思います。
また国や地方自治体が行うインフラ整備は、地域の安全と私たちの暮らしを支えていることを強く感じました。建設委員会の初日は、この二つの地点を視察して終え東京に移動しました。