活動報告・レポート
2024年8月26日(月)
外交史料館
外交史料館

外交史料館を訪ねました。現在「条約調印130周年記念 日英通商航海条約 陸奥宗光と条約改正」の特別展示が開催されていることもあり、明治以降のわが国の外交について話を聴かせてもらいました。中心は陸奥宗光外務大臣の不平等条約改正についてですが、吉田茂元首相や田中角栄元首相の外交についても説明してもらいました。明治以降の主要な外交の成果と平和について理解が深めることができました。

さて陸奥宗光外務大臣の「日英通商航海条約」締結については次の通りです。

陸奥宗光伯がイギリスとの間の不平等条約を改正したのは1894年7月26日ですから、今から130年前のことです。この条約締結によって領事裁判権を撤廃し、最恵国待遇を相互的なものに改めています。なお、本条約の発効はその5年後の125年前のことになります。陸奥宗光伯は条約発効の時代を見ることなくこの世を去りますが、その功績は日本外交史において燦然と輝いています。

ところで領事裁判権に関してですが、それまで外国人は内地居留地があり、居住地から40キロメートル以内に移動が限定されていました。領事裁判権を撤廃することで国内を自由に移動することができるようになりました。少し飛躍しますが、現在、インバウンド観光客が増えていることにもつながっていると思います。もし国内移動の制限がかかっていれば、日本を訪れる外国人観光は増えていなかったと思います。

現代においても外国人が入国した際、国内の移動制限をかけている国があるそうです。領事裁判権撤廃の時、外国人に旅行と居住、そして商業の自由を与えた陸奥宗光伯の功績だといえます。

陸奥宗光伯は、当初、不平等条約改正の相手国としてイギリス、アメリカ、ドイツの三か国と同時に交渉を進めていました。一番初めにアメリカが条約改正に応じると読んでいたのですが、実際は最初にイギリスとの不平等条約改正につなげました。

それには背景があったのですが、近代国家間の条約締結は、双方の国が国内法を整備していることが最低限の条件となります。民法や刑法などをしっかりと整っていなければ条約を締結することはありません。これは現代においても同じことで、不平等条約改正のため、明治政府は法律を整備していったことが土台になっています。

イギリスとの間で不平等条約改正を成し遂げた背景には、政府が法律の整備を行い日本の近代化を推し進めたこと。国民の国権回復への要求が高まっていたこと。極東におけるイギリスとロシアの対抗関係という国際関係が関わっていたことがあります。

陸奥宗光外務大臣の銅像

しかし、それだけでは充分ではありませんでした。陸奥宗光外務大臣が欧米、特にイギリスの情報を把握し、相手国と熱意を持って交渉したことが不平等条約改正の要因となりました。その功績が認められたことから、外務省の構内には陸奥宗光外務大臣の銅像が建立されています。

ここで陸奥宗光伯の3つの功績を記します。

1つ、不平等条約改正を行ったこと。
2つ、日清戦争の収束に貢献したこと。
3つ、人材育成を行ったこと。外交がわが国にとって重要だとわかっていたので、外交官試験を設けました。原敬や小村寿太郎を見出して登用したのも陸奥宗光伯の功績です。

条約調印130周年記念 日英通商航海条約 陸奥宗光と条約改正

外交史料館の展示で人類の歴史を振り返ってみると、その歴史は戦争と平和の繰り返しだと分かります。だからこそ外交史料館の果たす役割は重要ですし、できれば修学旅行などの機会を捉えて学生に来てもらい、学んで欲しいと思います。わが国の外交が、日本と世界の平和に貢献してきたことや、わが国の平和を担って来たことが分かります。

学生の訪問について尋ねてみると「都内の学生は勉強のため訪れてくれています。歴史の勉強になるのでよく来てくれますよ」と答えが返ってきました。都内にいると貴重な歴史的史料を見ることができるので有利だと思いました。和歌山県内の学生にも訪問してもらいたいと思います。

ところで外交において、現在の科学技術がもたらす新しい課題を説明していただきました。その1つが確証バイアスの形成です。確証バイアスとはインターネットやSNSで自分が好きな情報を検索することから、インターネットから示される情報が自分の好きな情報ばかりになってしまうことです。

その結果、自分の考えが正しいと言う思考に陥り、ますます偏った考え方になっていくことです。問題の全体を見据えて考えること、人の意見を素直に聞くことなどの思考がなくなるので確証バイアスの形成は危険な兆候です。

現代社会においては政府や企業、そして政治家などが情報を発信しても信じてもらえないという安全上のリスクが高まっている状況です。外交だけではなく社会が混乱しているのも確証バイアスが関係しているかもしれません。

明治以降の外交の一端を学び、現代社会が築かれた歴史を知ることができました。専門家の考えと行動は素人が考えるよりも数段高いところにあり、確証バイアス的な思考はブレーキをかけてしまう恐れがあると感じました。現代の国際情勢と日本の立場は難しい局面にあります。わが国が培ってきた能力と行動力、情報分析力などを総合した外交力を信じたいものです。