活動報告・レポート
2024年6月14日(金)
核燃料サイクル工学研究所

茨城県にある日本原子力研究開発機構の核燃料サイクル工学研究所を訪ねました。ここでは「再処理廃止措置の実証」「MOX燃料の開発」および「廃炉、地層処分、廃止措置関連技術の開発」を業務としています。いずれも原子力関連技術の研究開発に関わるもので、国のエネルギー政策の一端を担っている研究所です。

今回の目的は国のエネルギー政策について研鑽を深めることにあり、再処理とプルトニウム燃料技術開発、そして地層処分は現在の原子力発電に係る課題であり、人類が得たエネルギーを豊富に享受している現代人が、早期に廃止に至るまでの技術を開発しなければなりません。

但し短期間で研究の成果を得ることは難しく、次世代にまたがる長期的課題となっています。つまり私達の世代は次世代につなげる技術開発を前進させることが求められているのです。もし現在の研究開発を止めてしまうと、技術は継承できなくなるため、次世代が原子力発電の後処理に困ることになります。科学技術は継承していくことで進歩するものなので、この研究所の重要性が理解できました。ここで働く人は約2,100名だと聞きました。研究所だけでもこれだけ大勢の職員さんが関わっているのですから、如何に重要な課題であると分かります。研究と技術開発は大勢の専門家が関わることで解決していけるものなので、技術の継承とは人材をつないでいくことにあるということです。原子力関連の仕事に就きたいと思う人が途絶えてしまうと技術の継承はできなくなりますから、ネガティブなイメージにすると良くないと思います。

前回の1970年の万博会場には原子力発電で発電された電気が送電されました。その時は未来のエネルギーの象徴で、万博のスローガンだった「人類の叡智と進歩」を体現していたように思います。1950年代から原子力技術の開発が進められ、1970年代に実用化ができています。但し、廃炉や地層処分の研究は現在も続けられているので、廃炉を迎える原子力発電の処分方法は確立できていなかったことが私達の前世代の問題だったと思います。但し、先送りにしたのではなく、次世代が技術を開発してくれることを期待していた、それを信じていたと思うのです。

もし開発できないような科学技術を前の世代が作り出したとして、それを自分達の世代が豊かさと繁栄を享受するために実用化したかというと、それは「なかった」と考えます。後の世代が苦しむような科学技術を、先輩である日本人が実用化することはあり得なかったと信じています。ここまで人類の進歩のために技術開発したのだから、後の技術は託したと願いながら、研究を続けていると思うのです。

1957年に原子燃料公社東海製錬所が設立され、名称などを変更しながら現在に至っているのが証拠になります。技術開発を諦めるようなら、原子力技術は使われていなかったと思います。示してくれた廃止措置計画に基づく取り組みスケジュールは約70年後まで描かれていました。「この研究所では70年後も見据えた計画で研究開発を進めています」と話してくれたように、将来世代に責任をもって仕事を進めてくれています。この社会は誰かが知らないところで研究と技術開発、そして実用化までを担当してくれています。

この社会を誰が支えてくれているのか。私達は決して知ることはありませんが、多くの人が参画して社会は成り立っています。現代文明と社会の豊かさを支えている電気エネルギー技術もその一つです。わが国も世界も、脱炭素、つまり化石燃料を使ったエネルギーから脱却を図りながら電化シフトに向かっています。地球温暖化防止のためにも研究開発を止めることはできません。そんな科学技術の最先端と技術者のプライドを感じることができました。案内、説明してくれた関係者の皆さんに感謝しています。