今週、京阪神を拠点として仕事をしている経営者の方と懇談した時「物価が上昇している現在、中小企業の社長の仕事は、従業員さんの生活を守るために元請けと賃上げ交渉をすることです」と話してもらいました。本日、訪問した企業の社長と懇談している中で、同じ趣旨の発言がありました。話を聴いて「これが社長の仕事だなぁ」と感銘を受けて思ったので、その発言の趣旨を記します。
「私の会社は業界からすると小規模な会社です。光熱費や必要経費などは物価が上昇していることから会社の利益を圧迫しています。しかし会社は社員の生活を支えているので、生活必需品の値上げの影響を受けている社員の生活を何としても守らなければなりません。
そのために今春は社員の給与を上げたいと思っているのですが、そのためには原資を生み出す必要があります。当たり前のことですが、原資は売り上げから必要経費を差し引いて、そこから人件費を捻出しています。そのため全社員の給与を上げるためには、売り上げを増やす以外にないのです。そこで今春の賃上げのためにも会社の主要な取引先と交渉を続けました。
結果として、数社が私の思いと要望に理解を示してくれて値上げ交渉に応じてくれたのです。それぞれの取引先は数パーセントの値上げを快諾してくれたのです。合計すると、毎月、数千万円の売り上げ増加につながったので、増加分を全て社員の賃上げの原資に引き当てました。全社員の給与を引き上げることができたのです。社員の年齢や成果などによって賃上げ額は異なりますが、毎月、最低1万円の賃上げをすることができたのです。当社は夏と冬に賞与も支給していますから、数十万円の賃上げを達成することになります」という話でした。
「よく大手取引先が値上げ交渉に応じてくれましたね。社長の交渉力と熱意は凄いと思います」と伝えたところ「私が今春のための交渉をして値上げしてもらえたわけではありません」と前置きしたうえで、取引先が値上げに応じてくれた理由を説明してくれました。
「それは日頃からのつきあいをしていることが一つ。値上げ交渉は今始めたわけではなくて、昨年の早い段階から申し入れをしていたこと。
そして最も交渉が成功した要因は、私の会社の仕事の品質が同業他社よりも高いことにあります。交渉で最も嫌なことは『値上げを要望してくるのであれば、御社との契約は取りやめにして他社と契約します』と言われることです。
こう言われることが怖いので強く値上げ交渉ができないのです。私の会社は仕事の品質に絶対の自信を持っています。それは社員の質が高いから実現できたことです。取引先は現場で仕事を見ているので、どの会社の社員の仕事が速くてミスが少ないか。要領よく仕事をやり終えて、次の仕事に取り掛かっているのか把握しています。特に大手企業の場合は同時に数社が現場に入っているので、どの会社の社員が質の高い仕事をしているのか簡単に分かっています。
私も時々現場に入りますが、当社の社員は一通りの仕事をやり終えても時間内は休憩することはなく、他社の仕事であっても遅れている場合は言われなくても応援に入ります。
ところが他社の社員は、自分の仕事をやって時間が空いた場合はタバコを吸ったり同僚と話をする時間に充てているのです。
それが悪いとは思いませんが、全体の仕事の流れや後工程を考えると、自分の会社が受けている部分が終われば後は関係ないとはならないのです。まして早く作業を済ませて次の工程に入れたら、元請けの利益は増えることになります。その増えた利益の一部でも請け負っている会社に分配してもらえることにつながるのです。当社の社員は、そのことを理解して仕事をしていますから、仕事に対する意識も仕事の品質も違うのです。現場で作業をしている社員も私の考え方、つまり会社の方針を理解してくれているのです。だから社員を誇りに思っていますし、絶対に他社に負けない自信があります。だから外される心配はなく、自信をもって値上げの交渉を続けられたのです。
こうして値上げの原資は全て人件費として取り扱い給与に反映させたのです。専務と支店長には私が『今回の原資は全て社員の給与に引き当てたいので、私達の給与は据え置くことになりますが理解してください』と話しました。経営層は会社方針と社員が仕事をしてくれているから売り上げをいただいていることを理解していますから、当然納得してくれました。
繰り返しますが、現場の社員、事務の社員、そしてパートさんも全員の給与を上げることができました」と話してくれました。
社長の話は感銘を受けるもので、改めて「これが社長のやるべき仕事なんだ」と思いました。氣がつくと応接室での時間は約2時間が経過していました。心地良い異空間にいるような時間になりました。本日、突然にも関わらず貴重な時間をいただき、ありがとうございます。
- リハビリをしながら仕事をしている方から、パークゴルフの魅力を話してもらいました。「コースに出ると18ホールで約8,000歩、歩くのでリハビリに良いのです。健康に良いし楽しみながらプレイできるので高齢社会に適した娯楽だと思います」と話してくれました。
- 主に若い人を対象とした仕事をしている方が「大阪市内ではビジネスとして成り立っているのですが、和歌山県内にはまだこの分野の仕事はないと思います。故郷である県内で展開したいと思っています」と話してくれたビジネスモデルがあります。話を聴かせてもらったので可能性を探ってみます。
- 南紀白浜空港の国際線化に伴う国際線の定期便の開設について、具体的な取り組みの話を聴かせてもらいました。この件も可能性を探ってみます。
- 観光地のホテルや旅館での調理師不足の問題について問題提起を受けたこと。観光地のホテルの中には調理師を確保できないため、夕食を提供していないところもあるそうです。そのためインターネットで問い合わせがあっても、宿泊者数は一日、数人に過ぎない現状があると説明してくれました。調理師が不足したままで推移すれば、「十年後の観光地のホテルは食事を提供できなくなるところが増えてくる恐れがあります」との説明を受けました。