大阪出身の天下刀陣会の神谷さんは現在、和歌山市に住んでいます。元々、大阪市内で、和文化をもっと身近に感じてもらうため侍イベントや書道などの活動をしていたのですが、お城を拠点にして根の生えた活動をするため、全国にあるお城を巡ったのです。姫路城などの名城も訪れたのですが、神谷さんが選んだのは和歌山城でした。
「和歌山城を拠点として和文化を広めたい」「和歌山城を活用して活動することで和歌山県を全国に売り出し、和歌山市の活気を生み出したい」と思ったことが理由です。
但し、ひとつの理由は「和歌山城は地域振興に活用されていない。だから活用すればお城が生きる」と考えたこともあります。この言葉に意味を付け加えると「お城としての力があるけれど、観光資源として使い切っていないのはもったいないことです。使い方次第ではお城を生かしたまちづくりができる力を潜めているので、和歌山市のために尽力したい」ということです。
神谷さんは和歌山県の魅力について次のように語っています。
「和歌山県は食と温泉と美があります。現代人にとってこの三要素がとても大事なものです。自然の恩恵を受けた食材、太陽と海、神々しい自然に包まれた大地から受け取れる美、そして癒しと健康に欠かせない温泉。この三つが揃っていて、しかも和歌山県の場合、レベルが高いのです。和歌山城と食と美、温泉を組み合わせることで、人を呼び込める県内観光ができます。エンターテイメント以外に人が求めているものが全て揃っている和歌山県ですから、ここで地域振興の取り組みを試してみたいと思いました」ということです。
神谷さんは県政の取り組みについて説明した後に、「記紀」からつながっている和歌山県の歴史を伝えました。
「和歌山県の歴史は『記紀』から始まっています。高天原を出立した神武天皇の東征は難波から紀州に入ります。紀伊半島を南下して中紀に向かう過程が『記紀』に記され、それから南に関しては『口碑』として地域で伝えられ、その物語が受け継がれています。
白浜町太刀ヶ谷湾付近にある太刀ヶ谷神社の御神体は神武天皇の太刀ですから、天下刀陣会として活動している神谷さんと親和性があります。太刀をテーマに活動することは和歌山県らしさがあります。
この地域には世界遺産の熊野古道があり、和歌山県はわが国の自然信仰の聖地になっています。和歌山県の食と美、温泉を生かして観光と健康、そして和歌山城を拠点とした歴史をテーマにした活動を期待しています。できるなら和歌山城と太刀ヶ谷神社を結んでもらえると和歌山県の歴史と温泉、食と美が揃います」と伝えました。
「和歌山城は言葉を選ばないで言うなら、誰もいじっていないお城であり、これからの活用を考えるとやりがいがあります。現代人が求めているものが揃っている和歌山県が、こんなに遅れているのは変ですよ。県外の仲間にも和歌山県に来てもらって、地域を盛り上げていきます。そのためにはスピードが必要ですから、行政には判断のスピードアップをお願いしたいと思います。そうしないと機運が巡ってきた時期を逃してしまいます」と答えてくれました。
神谷さんが伝えている和文化には、侍、書道、祭りと踊りがあり、食による健康とメイクアップなど女性の美の取り組みも行なっています。映画やラジオなどでの発信力も備えているので、和歌山県の魅力発信の力になってくれます。
神谷さんは活動の拠点を和歌山市に移してくれているので、そのことからも本気の活動をする覚悟が伺えます。歴史的資源であり観光資源でもある和歌山城を、今後、どう生かしていくのかを楽しみにしています。