活動報告・レポート
2024年4月8日(月)
金融政策
「金融政策の転換と日本経済」講義

先週の土曜日に「金融政策の転換と日本経済」の講義を受けました。講師は法政大学経営学部の平田英明教授です。教授は元日本銀行で現在は大学教授ですが、仕事柄、地方都市に講演会などで立ち寄る場合、少し早い時間に到着して駅周辺を散策するようです。

和歌山市での講演だったので、JR和歌山駅に着いた時に駅周辺を歩いた感想を話してくれました。

「土曜日の午後なのに、JR和歌山駅に人通りが少なかったので驚きました。でも地方都市はどこも同じですから日銀の経済の見立て実態を反映しているのか分からないところがあります」。日銀は地方都市に視点を置き定点調査をしていますが、やはり実際にまちを歩いて見ないことには人の動きや実体経済は正確に分からないものだそうです。

またオフィスビルのトイレに入ったところ「懐かしい和式のトイレがありました。東京のビルでは見ることは稀になっています。トイレも地方都市の文化だと思うので必要かもしれないので、とやかく言う必要はありませんが、トイレでもまちの様子が分かります」。

こんな話からスタートしました。

そして講義では金融の基本である信用創造の話から始まりました。信用創造は和式トイレのような理論ですが、基本なのでこれを理解しておくことで現代の金融が理解できますと話してくれました。

信用創造とは、銀行が預金、貸し出し、預金、貸し出しを繰り返すことで、貨幣を創造することができていく理論です。最初にお客さんから預かった預金が1,000円だったとすれば、銀行は準備高を除いた金額を貸し出しに充てていきます。こうすることで信用が創造されていくので、1,000円だったにも関わらず、通貨供給量を5,000円に増やすことができるのです。

通貨供給量M=(1/(1-0.8))×1,000円=5,000円となります。この式の場合、準備高を0.2と仮定しています。最初の通貨を元にして通貨を創造していくことで経済を動かしていくのです。銀行の口座にあるのは1,000円ですが、これを貸し出していくことで顧客の口座の数字が増えていくのです。あくまでも銀行預金口座の数字が増えていくだけなので、通貨は増えていません。銀行にある通貨は1,000円だけですが、銀行にあるお客さんの口座の数字の合計が5,000円ということになるのです。これが信用創造であり銀行の役割です。もっと言うなら、銀行は信用創造をすることで経済を循環させる役割を持っているのです。

逆にいうなら1,000円を1,000円のままで増やすことができないなら、それは銀行ではないのです。

参考までに、経済学でいうところの通貨供給量Mは、現金Cと預金Dの合計を指します。銀行はこの預金があるからこそ、信用を創造することが可能となっているのです。但し、預金の全てを貸し出しに回してしまうと手元に現金が不足するので、銀行は日銀の当座預金口座に、預金のうち貸し出せないように準備預金することが義務付けられています。

このことによって日銀はベースマネーを増減させることで、通貨の供給を決めることができるとされています。ところでベースマネーとは現金Cと準備Rのことです。そしてベースマネーの増減は金利によって行っています。

これが基本的な金融政策ですから、地方自治体は金融に関与できないので金融施策による経済対策は実現できないことになります。

ところで植田日銀総裁は金融緩和を解除しましたが、これは実体経済で需要を抑えることで物価の上昇を防ぐことが適当と判断できる経済情勢であると説明しています。市場がプラス金利のある状況に慣らしていくことを指向しているもので、直ちに解除はしないことで市場を慣らしていくイメージです。

久しぶりに金融政策について講義を聴く機会があり勉強になりました。平田英明先生の講演の機会を作ってくれたことに感謝しています。