先日、市内の小学校で授業を行ってくれた星野恭子先生から「早ね、早起き、朝ごはん」に関する資料をいただきました。いただいた資料や論文には「子どもにとって睡眠は、心身の発達と発育の基本である」ことを記してくれています。
十分な睡眠は子どもだけではなく大人にとっても大切なもので、心身の健康と健康寿命延伸のためにも生活習慣にしたいほどの行為です。
先生は子ども達に「オリンピックの金メダリストなどトップランナーに慢性睡眠不足の人はいない。皆、最高のパフォーマンスのために、最も睡眠を大事にしている」ことを伝えています。逆に「もし〇〇選手(今だったら大谷選手など)が睡眠不足だったらどうする」と質問することで睡眠が大切なことを実感するようです。
慢性睡眠不足は身心衰弱状態に陥ることであり、そんな状態で何かを行っても良い結果が出ないことを、大人も理解すべきだということです。
多くの大人は睡眠不足の翌日の仕事の効率の悪さを経験しているはずです。夜遅くまで時間外労働をして睡眠不足になった時、翌日の仕事の効率の悪さと結果の醜さの記憶があると思います。また深夜遅くまで同僚たちと飲食をしたため寝不足となり、翌日の仕事に悪影響が及んだ経験もあると思います。そんな経験があるなら、子ども達が睡眠不足に陥る環境を作ってはならないと思うはずです。
子ども達にとっての睡眠は、成長期の身長や体重の増加と共に、精神の発達に影響を及ぼすものであり、大人よりも十分な睡眠、睡眠衛生が大切なのです。
星野先生は「科学が進歩しても、AIなどのデジタル技術が進歩しても、人間の脳や身体の特性は変わっていません。脳の発達に影響を与えるものは、昔から変わらず早寝早起きなのです」と話してくれました。
瀬川記念小児神経学クリニックの6代目である瀬川昌耆(まさとし)先生は、明治17年に「日本最初の西欧医書であり、日本独自編纂の小児科教科書」を出版していますし、明治39年に出版した『實驗の育兒』では「寄席、芝居の害」を記しています。
そこには「小児には最も睡眠が必要で、眠る間に脳が休養するのであります。寄席に連れていき『面白いだろう。おとなしく観ておいでよ』など親と同じように小児も面白かろうと思うが、これは至ってよろしくない大変な考え違いであります」と記しています。
瀬川昌耆先生はドイツに医学留学していますが、その時のメンバーには森鴎外や北里柴三郎もいて、日本近代医学の源流とも言える医師だったのです。
明治時代の医学書にも記されているように、人間の脳は十分な睡眠が必要なことは当時も今も変わっていないのです。
星野先生は更に「地球は約24時間で太陽の周りを自転しながら公転し、ホモサピエンスは昼行性の地球上の哺乳類であり、睡眠覚醒リズムの発達は脳幹機能、心身の成長、自律神経の発達に影響します。人は能力を100パーセント発揮して昼に充実した楽しい活動をするために、夜は十分な睡眠が必要であることを理解して欲しい」ことも伝えてくれました。
また平日と土日で起床が2時間以上ずれている、社会的時差ボケがあると次のような症状が出てきます。
- イライラする。
- 睡眠不足感
- 昼間の眠気
- 疲労感
- 学業成績の低下
このように睡眠不足をして良いことはありませんから、この指標を元に生活習慣を見直していきたいものです。