岸和田生まれで岸和田育ち、現在、大阪市内に本社を構える社長が和歌山市内で和歌山支社を開設してくれています。もう約一年が経過していますが、取り組んでいることが和歌山愛に満ち溢れています。
和歌山の人にオフィスを使ってもらいたいと考えて、複数のオフィスとレンタルスペースを設置してくれました。また故郷の岸和田市内で無農薬野菜を栽培しているので、それを和歌山市内で販売しています。販売だけでは賑わいにならないので、月に一度の頻度でマルシェを行うこと考えてくれています。
「和歌山市では近隣の交流の機会が少ないように思うので、地元の皆さんが交流してくれる機会になるように」と願ってのことです。
ビルの配色は、和歌山県の果物である蜜柑と梅の色彩と階段には蜜柑の葉っぱの色を取り入れています。市民税は限度額いっぱいの金額を、毎年、和歌山市にふるさと納税してくれています。
ここまで和歌山愛が強いのは理由があります。岸和田市で育った社長は、小さい頃、お盆とお正月は家族のみんなで和歌山市に宿泊することがお決まりだったのです。小さい頃に体験した和歌山市での海水浴と新鮮な食材を使った食事、そして市内の百貨店での買い物は忘れられない良い思い出になっているのです。
その体験から、今も「和歌山市のことは大好きなので、僕に出来る限りの恩返しをしたいと思っています。和歌山市が昔のように元気になってくれること願って、事務所を出して地域の活性化と仕事の創出、そして和歌山市に税金を支払いたいと思っています。
現在の僕の会社の事業規模からすると出来ることは限られていますが、和歌山市での事業を更に拡大して、もっともっと和歌山市の活性化に貢献したいと思っています」と話してくれました。
和歌山市で起業する若い人のために、賃貸オフィスの電気代は使用した分だけを徴収することにしており「電気代の基本料金は僕が負担しています」としていますし、それ以外の光熱費や水道代などこのビルの共益費の負担も「なしにしています」ということです。
起業しやすい環境をつくってくれているのは「小さい頃にたくさんの思い出をつくってくれた和歌山市への恩返しのひとつ」なのです。
社長と話を交わしていると元気が出てきました。会話で元気になれる。これだけで活力が生まれそうです。
日経新聞夕刊「令和6年2月15日」の「掘り下げ!関西白書」を読みました。テーマは「経営の神様に会える場所」です。関西府県の企業の創業者の名前を冠した記念館が紹介されています。
大阪府では池田市の小林一三記念館と安藤百福発明記念館。門真市の松下幸之助歴史館。京都府京都市にある立石一真創業記念館と稲盛ライブラリー。兵庫県神戸市にある中内功記念館。滋賀県豊郷町の伊藤忠兵衛記念館。奈良県にあるのは石橋信夫記念館。
和歌山県以外の府県に創業者の記念館があるのです。この記事を読んで、和歌山県に記念館がないことは寂しい限りです。企業家を輩出していないのであれば理解できますが、そうではないと思います。偉人を輩出している県なのに、その功績を称える記念館が少ないことが残念です。特にわが国を代表する偉人である松下幸之助や陸奥宗光伯の記念館が、和歌山県にないことは無念にさえ思います。
活躍した時代が大阪や東京だったことから、地元での物語が少ないことや、偉人の遺品が地元に残っていないことも原因かもしれません。しかしそれよりも、地元が故郷の偉人を大事にしてこなかった近代の歴史が問題かもしれません。故郷の偉人と歴史を大事にすることが、これから和歌山県が再生するために必要な取り組みかもしれません。現実は形よりも精神から始まっているからです。