和歌山城ホールで開催された「はばたけスペインへ フラメンコと共に!」を鑑賞しました。主催は、和歌山フラメンコ協会で、森久美子先生が自らの舞踊団と若手舞踊家を招いて、フラメンコと日本との関わりや歴史を紹介してくれながらのステージを魅せてくれました。
今回は和歌山市内の小、中学生を招待しての開催で、より文化度を高めた内容でした。
フラメンコを生んだスペインはイスラム勢力に約800年も支配された歴史があったのです。西暦711年、北アフリカからイスラム勢力であるウマイヤ朝が侵入し、キリスト教勢力だった西ゴート王国を滅ぼしたのです。この時から800年間もスペインはイスラム勢力の支配を受けた歴史があったのです。800年もの間、イスラム勢力に支配されていて、その後キリスト文化に戻ったとしても、以前のキリスト文化とは全く違った文化になったことは容易に想像できます。
森先生は日本の歴史と比較して説明してくれました。現在の2024年から800年前は1224年となり、実に鎌倉時代にまで遡ります。鎌倉時代までが日本文化で、それ以降、イスラム文化が続き、2024年に日本文化に戻ったとしたら、果たして鎌倉時代の日本文化、日本人の精神性にそっくりそのまま戻れるかとの質問には「NO」と言わざるを得ません。
スペインの文化はキリスト文化から途中、イスラム文化となり、またキリスト文化へと戻っているので、キリストとイスラムが融合した文化だと言えます。そのため独特の文化が発展して現在に至っていると言えそうです。
この融合の文化の一つとして、フラメンコの掛け声である「Ole」は、アラビア語の「Allah」から来ていると説明してくれました。カタカナで書くと「オレ」は「アラー」から来ているということです。文化には歴史が色濃く滲み出ていることが分かるものです。
そんなフラメンコを和歌山県でずっと以前に紹介してくれた森先生は、独特のフラメンコ文化を誕生させてくれました。スペインと日本文化を融合させた「和のフラメンコ」です。これは本場スペインにはないもので、森先生が欧米に輸出している文化になっていると思います。文化は融合させることによって、次々に新しい文化を誕生させていきます。
令和5年11月、森先生は「和のフラメンコ」の作品である「清姫伝説」の舞台を私達に届けてくれました。和歌山県の文化月間に相応しい舞台で、もう私達は「和のフラメンコ」は和歌山県の文化であることを認識していて、それは森先生が生み出したものであることも知っています。
今回の「はばたけスペインへ フラメンコと共に!」は、本場スペインのフラメンコを存分に堪能できる舞台でした。森久美子フラメンコ舞踊団と若手舞踊家の共演は、和歌山県のフラメンコの実力と文化性を認めさせてくれるものであり、東京から来た二人の舞踊家のフラメンコは日本人の才能は世界に通用するものであると納得させてくれるものでした。
こんな凄いフラメンコの舞台を用意してくれた森先生のプロデュース力と、この舞台を小、中学生に見せたいと願って企画した先生の文化的な視点に感服しました。
フラメンコ舞踊とその歴史の解説によって、会場にいた私達は確かにフラメンコと共にスペインを旅しました。マドリードからアラビアへと、そしてバルセロナへと旅しただけではなく、キリスト文化とイスラム文化が融合していった歴史の世界も旅したのです。
そして日本の舞踊家の皆さんが、スペイン文化の象徴であるフラメンコを日本人の魂で踊ってくれて、現代の日本へと戻してくれました。約2時間、フラメンコと共に出掛けたスペインの旅は異文化を日本文化に融合させ発展させている日本人が持つ力を感じさせてくれるものでした。
お招きいただいた森久美子先生と、一緒に鑑賞した和歌山フラメンコ協会の役員の皆さんに感謝しています。ありがとうございました。