合理主義が全て正しいのかの議論がありました。元大学の物理の教授は、既に将棋や囲碁の分野ではAIが人間の考えを越えています。でもAI同士の対局を観戦しても決して楽しくありません。そこにドラマがないからです。人間が対局するのでドラマが生まれるのです。プロの棋士でさえミスをすることもありますし、人間の心が盤上に現れるので観戦していて楽しいのです。
仕事でも同じだと思います。AIの仕事レベルは発展途上なので、人間の仕事を取って代われるというとまだそこまで至っていません。しかしやがて代替できる時代が訪れると思います。しかしそこには心がないのでAIを使った社会は楽しくないと思います。
AIは合理的な判断をするので、規定通り、過去の事例に基づき公平な判断を下してくれますが、それは楽しい社会の実現かというと違うと思います。物事はプロセスの中に個別の事情や「そうありたい」と思う気持ちがあるので、合理的な判断をすべきではないと思って相談することがあるのです。全てのことを規定通り、決められた通りに物事を進めて良いのであれば、裁量の余地はありませんが逆に決めることは楽なのですが、相談者にすればそこには心がないという不満を感じるようになります。AIが判断する社会は規定通りの判断に基づいて物事が進むことになるので、迅速ですが心を感じられなくなりそうです。
ただ合理的な判断は今までも企業経営者などが行っています。
あるガソリンスタンドは、コロナ禍以降、営業時間が24時間体制から、午前7時から午後11時までに変更なりました。コロナ禍の時、それ以降においても夜間の売り上げが減少したのですが、人の配置は必要なので利益と経費を比較して「利益がない」という判断を下し、営業時間を短縮したのです。
その結果、夜間勤務の必要がなくなり、人の派遣先の会社に「派遣はいらなくなりました」と通知をして人件費を削減したのです。これは経営者の合理的な判断なので問題はないと思います。
ただコロナ禍後に社長が交代していたのです。前社長は「コロナ禍で売り上げが落ちたとしても、24時間の給油体制はこの地域の方々にとって安心を提供していることなので、この程度の売り上げ減少であれば続けたい。減少したと言っても年間売り上げは確保できているので、利益が薄くても継続する」という判断だったのです。
社長が交代してこのガソリンスタンドの数字を見て「利益が出ていないので営業する理由がない。営業時間を7時から23時までに変更する」と変更したのです。
合理的理由での判断ですが、そこには少ない人数かも知れませんが地域の方々が必要としていることを除外しています。企業としては当然の経営判断ですが、地元との共生の観点は省かれているように感じます。AIが社会で一層活用されるようになっていくと、データに基づく判断を示してくれるので、それを基に経営者が判断することになると思います。ここに経営者によって判断の違いが出てくるのです。
このガソリンスタンドの事例は、果たしてどちらが正しいかは分かりませんが、視点が変わると「どちらが良い判断なのか」意見が分かれます。
近い将来、多くの分野で合理的判断に基づいた社会に変化するかも知れませんが、このガソリンスタンドで働いていた人の話を聴くと「人間らしい気持ちを感じる社会は狭まってきているのではないか」と感じました。人件費という数字は経費ですが、人を雇用して働いてもらうことによる賃金と考えると、人間らしさが判断に必要なのかと思います。
勿論、ここには企業全体の売り上げや利益、事業計画などを考えることが前提ですから、時間短縮の局面だけで現実の経営を考えることはできませんが、ケーススタディとして社会のあり方を考える材料になると思います。
- 令和6年春に計画している講演会の講師の依頼を行いました。日頃からおつきあいをさせてもらっていることから、講師を快く引き受けてくれました。常日頃が大事なことを感じます。
- 薬草についての資料を受領したので読もうと思っています。資料には健康維持と病気にならないための方策も検討されています。