「文字ばかりの媒体からアニメへと情報伝達の手段が変わっていますが、これは分かり易いから当然のことです。文字で伝えるよりも人が台詞で伝える方が相手の理解が容易になります。音響文化とも言うべきもので、これは言霊に通じるものです。日本には言霊の文化がありますが、そこに戻っているということでしょう」と話がありました。
言霊とは言った言葉に向かって現実が引き寄せられるような現象を言いますが、日本に宿る精神性「あらゆるものに魂が宿る」ことにも通じることです。アニメを通じて言葉を伝えることが分かり易くすることを目的としているのは、相手に確実に伝えるためだとも言えます。活字であっても文字で伝えるよりも台詞で伝える方が伝わる力が強いので、わが国の言霊文化に通じているように思います。
言霊を使った記述は「万葉集」にもあるようで、「言霊の幸(さき)わう国」と表現されているのです。これは「言葉の力で幸せがもたらされる国」と解釈されているもので、日本は文化を分かり易い言葉で発信してきたのです。
アニメの台詞で日本文化を伝えることに意味があると思いますし、アニメは優れた言霊を伝える手段のようです。
これを音響文化と表現して「表現の手段は古来に戻っている」と説明してくれた方を凄いと思っています。日本文化を知ることで、2600年以上も続いている奇跡の国の力を感じることができます。奇跡を続かせている理由は、誇りと自信を持つことだと思いますから、この国の歴史と文化を学び、継承することを目指したいと思います。
会議の場で隣り合わせになった方に、大和街道について話をしました。
和歌山城から江戸に向かう参勤交代の道、この街道を大和街道と言いますが、地元の和歌山市でもどこを通っているのか知られていないようです。和歌山市の京橋が起点となり、紀の川に沿った道を進みます、橋本市に十里松がありますが、そこを通って奈良県、三重県へと抜けていきます。
本町界隈には敵が攻め込んできた場合でも、和歌山城内を簡単に通り抜けることができないように道がクランクになっているなど、往時を偲ばせてくれる道も残っています。
また街道沿いに残っている古い家屋の軒先は、歩いてみたら今の形状よりも長くなっています。これは街道を歩く人が、日よけや雨宿りができるように配慮されているということです。人を思いやる気持ちを持つ、日本人らしい心配りを感じる造りです。
大和街道には一理ごとに松が植えられているので、道行く人たちは一里松を目印にして旅の行程を考えていたそうです。和歌山市内では、今では一里松が残っているだけで、橋本市には十里松が当時と場所を変えながら維持されています。陸奥宗光伯が和歌山市から所払いされた時にやってきたのがこの十里松であり、今も故郷の偉人を思う地元の方が維持してくれているのです。幕末からの歴史は現代に続いていることを感じさせられる物語となっています。
説明をしたところ、聞いてくれた方から「大和街道のことは知りませんでしたが、故郷の歴史に興味が湧きました。話を聞いてルートは知っているのですが、これまで一度も歩いたことはありませんでした。気候がよくなれば歩いて訪ねてみたいと思います」と話してくれました。
大和街道を知ったことから、紀州の歴史や偉人の功績に関心を持ってくれることは嬉しいことです。故郷の歴史を語ること、その場所を訪ねること、そして他の人に話すことこそ、私たちにできる歴史を継承する取り組みです。
会議の席での短い時間内での話でしたが、物語を聞いてくれたことで良い時間となりましたこと感謝しています。