世界の国々に赴任して、世界を見てきた元外務省の方から「今の世界、今の日本をどう見るか」をテーマに話を聴かせてもらいました。
大国同士が直接衝突していないので第三次世界大戦には至らない。大国同士は同盟によって抑止力が保たれていることから直接戦わないので、大乱になっているが大戦にはならない。
問題はロシア優位で和平を行った場合に、西側諸国の鉾の収め方が難しくなることである。ロシアに経済制裁を加えているので、どう回復させるのかが課題となる。
ウクライナ情勢に関しては、ロシアが有利に戦いを進めている状況である。2024年3月に大統領選挙を控えているので、戦いを優勢に進める必要があるので躍起になっている。現状はロシアが優勢なため核兵器は使用しない。またガザ戦争が起きたこともロシア有利に働いている。これはアメリカがイスラエル支援に回ったため、イスラエルに武器を提供していることからウクライナに回す余裕がなくなっているからである。
イスラエル情勢に関して、アメリカは2つの艦隊でイランを制止しているため、今以上、アラブ諸国に拡大することはない。またアラブ諸国のハマス支援は口先だけであり、シーア派はイランと組んで「全イスラム」を演出しているだけである。
またアメリカはシェールオイルの油田を国内で発見したことから、世界最大の産油国になっている。そのためアラブ諸国からエネルギーを輸入する必要はなくなっているので、従来のように大事に考えていない。
結局、イデオロギーで動くのは若い人達だけであり、世界はイデオロギーで動いていない現実を知るべきである。西側諸国もイスラムも、上層部は資金とパワーが欲しいだけなので、お金と権力によって動くだけである。国際政治はイデオロギーで動かないので、イデオロギーの評価は小さく見積もることである。そうしないと世界の動きの予測を見誤ることになり情勢を把握できない。
北朝鮮の動きは韓国、アメリカ、日本連合で抑止している。また中国の台湾侵攻は蓋然性が低下していることから侵攻はない。また中国が台湾を侵攻すれば、西側諸国は台湾の海域は封鎖することになる。台湾海域が封鎖されると中国の経済活動は動かなくなるので、数か月で立ちいかなくなる。
問題は台湾侵攻の危機よりも、米中関係改善の動きがある場合、世界を揺り動かせるマグニチュードになることである。
以上のことからアメリカの地位が低下しているように思えるが、中国やロシアの時代が訪れるわけではない。中国やロシアが台頭して「多極化時代」になるかと言えばそうはならないで、世界は「無政府化」に向かっていると言うべきである。つまりどの国も覇権を取れないでいる状況になっている。
ではわが国は「少子化だから仕方ない」の思考は毒になるので、言わないでおくべき。生活水準と自由を護るためには生産性の向上は不可欠である。生産活動、経済活動を抜きにして国力を維持することはできないと心得るべき。経済力を落としても豊かさを享受できれば良いという考えはあり得ない。経済力を落とせば、わが国は現在の豊かさを忽ち失うことになる。
現在の日本の課題は「異次元の緩和」の罠から脱却すること。「異次元の緩和」は幻想にすぎないので、そんな経済対策はない。
日米同盟を維持しながら防衛力を強化することであるが、そんなにうまく行く方法は見つからないのが現実である。