活動報告・レポート
2023年11月4日(土)
館大工

「和歌山県の重要文化財や歴史的建築物を護りたいと思います。そのためには宮大工と同じ仕事をしている館大工の技術を使って修繕をするなど継承していくことが必要だと思います。宮大工の人数は少ないのですが、国宝級の建築物や重要文化財の仕事をしています。和歌山県の重要な建築物は、和歌山県の職人さんが手掛けてこそ職人技術と伝統が護られます。これまで寺社仏閣の建築や改修に携わってきた職人がいることを知っておいてください。またそれらの建築を紹介しますので、実際に見てもらって職人の仕事の成果を確認して欲しいのです」と話をいただきました。

宮大工は和歌山県内にはほとんどいないと認識していますが、館大工として建築や修繕を手掛けている職人さんがいることを伝えてもらいました。

通常の建築物と異なるのは木材や瓦の質など材料と設計です。例えば、寺社に使うための欅の木を購入した後、20年から30年は寝かせて乾燥させるそうです。切り倒した欅を材料として使う期間は実に30年以上となります。寺社仏閣の建築に係る費用が高くなる理由が分かるものです。

また瓦は素人には分かりませんが、良い瓦は高温で焼き固めているので「水が浸透しない」のです。安価な瓦は高い瓦と比較して親水性があるので、年月と共に雨水を家屋に漏らしてしまうそうです。しかし瓦の品質は見ただけでは分かりませんから、名のある職人さんが作ったものを使う必要があります。

以前、神社の建て替えの仕事をしていた時、「この瓦の品質は悪いから、全て私の指定した瓦に変えてくれ」と言われた話を聞かせてもらいました。

後日、瓦職人さんが現場に来て「では私達が使おうとしている瓦とあなたが指定した瓦の品質を比べてみましょう」と言って、二つの瓦を水に浸したのです。そして「一日経てば分かります」と言いました。

翌日、水槽から瓦を取り出して重量を量りました。職人さんが焼き固めた瓦の重さは水に浸す前と変わりませんでしたが「私が指定した瓦を使うように」と言った人の瓦は重量が増えていました。

つまり水分を含んでしまったので、高温で焼き固めたものではなく品質が落ちているのです。つまりこの瓦は価格が高い割には、品質は粗悪だったのです。

寺社仏閣に使う材料は高額になりますが、素人では分からないので「高い」と感じてしまうのです。

しかし館大工が携わる仕事は50年、100年の仕事ではありません。「1000年先の仕事をしています」ということです。寺社仏閣を建築すれば次に建築するのは1000年先になるような仕事をしているのです。年月と共に災害によって朽ち果てるような仕事はしない自信と誇りを持っています。だから依頼された建築物の図面を引くのに何カ月もかけますし、建築には大きさにもよりますが一年以上かけています。「400年先や1000年先の時代には、私達は誰も生きていないでしょう」と話してくれたように、後世の評価に耐えられる仕事をしているのです。

付け焼刃的な仕事ではなくて、本物を志向しているプロの仕事をしていることへの自信と誇りを感じました。

そして「和歌山県内に出雲大社と同じ造りの神社があります。スケールは1/4ですが、建物は同じです」と紹介してくれた神社があります。この建築も手掛けたことから「出雲大社からもここに来て、この神社を見てくれたのですよ」と話してくれました。その時に認めてくれたので、出雲神社分社となっている話も聞かせてくれました。

素晴らしい話を聞かせてくれたことに感謝しています。