建設委員会の三日目は春日部市に移動して「首都圏外郭放水路」の視察を行いました。この防災施設は国道16号の地下約50メートルに建設されていて、大雨や洪水時に河川から水があふれ出た時に、その水を地下に送り込むしくみになっています。
河川から水を取り込む「立坑」と地下で水を送り込む「地下道」、スムーズな排水を促す「調圧水槽」、そしてため込んだ水を江戸川に吐き出す「ポンプ」などが地下に設置されています。
これらは巨大な施設であり、その中でも調圧水槽は高さ18メートルもある柱が何本も建ち並んでいて「防災地下神殿」と呼ばれているほど神秘的な雰囲気があります。
防災施設でありながら、「地下神殿」と呼ばれているように神秘的なことから、インフラツーリズムを実施しています。インフラの見学を有料化して施設見学ツアーの観光商品として販売しています。料金はコースによって異なりますが、1000円から5000円で設定されているようです。施設見学は有料ですが「毎日、ツアーのお客さんで満員です。そのため年間55千人が施設を訪れています」と説明があったように、今日も定員いっぱいツアーのお客さんを受け入れていました。
インフラツーリズムという言葉は初めて聞きましたが、インフラの見学がツアー商品になることは時代の要請だと思いました。私達の生活を支えているのが都市インフラですが、普段はその役割も維持管理していることも全く気に留めていません。インフラの維持管理には多額の予算が必要ですが、これが必要な予算なのかそうでないのかも、施設の役割を知らなければ判断できません。
インフラ設備を見学することで「都市は人工施設、インフラによって護られている。都市機能は保たれている。だからインフラは必要ですし、そのための予算も必要だ」と考えるようになります。
ここで分かったことは、東京都は利根川や江戸川、そして荒川の氾濫を防ぐことで安全性が確保できているということです。関東平野はローム層であり土地が低くて雨に弱い性質があります。江戸時代から治水対策を講じながら江戸のまちを護ってきた歴史がありますが、現代でも安全性を維持するためのインフラを建設し、設備を維持管理しているから都心の安全は保たれているのは全く同じです。
東京都は地形と地層の性質上、災害に弱いと説明を受けました。河川が氾濫すれば忽ち、都市機能は乱れてしまいます。そのため江戸川の上流部に「首都圏外郭放水路」を建設していますし荒川と中川の間に「荒川ロックゲート」を建設しているなど、多くの治水施設が設置されていることを知りました。
東京都の安全性は人工建築物、インフラを整備、維持管理していることから保たれていると思います。つまり安全確保のためのインフラがなければ都市機能は維持できないということです。インフラを維持管理するためには、管理する人と技術が必要となりますから、この維持管理に大きなコストがかかっています。つまり必要な予算なのですが、概算として「設備の維持管理費」と記されているだけでは、「本当に必要な予算なのか」と思ってしまいます。
予算の審議をするためには現場を知ることが大事であり、都市の維持管理には多額の予算が必要となっている現代社会であることも分かりました。つまりインフラを建設、維持管理するだけの予算がなければ現代社会は成り立たないということです。
一般の道路や高速道路、河川管理や治水対策、信号機の設置や横断歩道の整備など、社会で必要なインフラを維持するには予算が伴います。現代社会は常に人と技術が支えているので毎年一定の多くの予算が必要となっています。予算がなければ現代社会も生活もないのです。現代文明の恩恵を享受している私達は、現代社会で生きるためにはインフラ整備に要するコスト負担が必要であることを認識しなければなりません。
現代社会を維持するためには、毎年、今あるものに対する予算措置が必要となります。「これは必要ない」「これは無駄」など言うことは容易いのですが、そのインフラや設備が、社会においてどんな役割を果たしているのか知ったうえで判断することが大事なことです。
「首都圏外郭放水路」を視察して、都市を維持するために見えないけれど必要なものがたくさんあることを考える契機となりました。
今回の建設委員会は、都市、もちろん地方都市を含めて都市機能を維持するために必要なインフラがあること。そのために予算が必要なことを再認識する機会となりました。