活動報告・レポート
2023年10月15日(日)
まほろば塾
薬師寺まほろば塾

薬師寺で大村智博士の公演を聴かせてもらいました。言うまでもなく、大村博士はノーベル生理学・医学賞受賞者で、微生物の生産する有用な新規天然有機化合物の研究をしています。中でも抗寄生虫薬イベルメクチンは熱帯病のオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症などの治療薬として使用されています。このイベルメクチンは、数年前に新型コロナウイルスの熱にも効くと聞いたことがあります。真偽のほどは分かりませんが、1年から2年前に「イベルメクチンを使えば新型コロナウイルス感染症の熱は抑えられるのに、どうして日本では使用できないのだろう」と何度も問い合わせをもらったことがあります。その薬の開発に大村博士が関係していたことを知りました。

大村博士のモットーは「実践躬行」だと話してくれました。これは「躬は自ら、自分での意味なので、口だけでなく実際に踏み行うことが大切だということ」です。言うだけで実践しなければ何の用も足さないことを表していますが、学生時代にこの言葉に出会ったからモットーにしていると話してくれました。

薬師寺まほろば塾

本日のテーマは「北里柴三郎先生の求めたる処を求めて」でしたが、偉大なる北里先生には山田武甫氏という師がいて、そのまた師が横井小楠氏ですから、優れた人であっても、その人を導く師がいることに改めて気づきました。どんな優れた人でも導いてくれる師がいることで成長を遂げることが出来るのです。師がいない、友人がいない、そして支えてくれる人がいなければ、どんなに才能があったとしても世に出ることは叶いません。北里先生でさえ導いてくれた師がいたのです。

大村博士は学生時代から高校の先生をしていた時代、そして大学での研究者の時代のことも話してくれました。決して恵まれた学生生活ではなかったのですが、東京都立墨田工業高等学校の夜間部の教師として化学と体育を教えていた時に「昼は工場などで働きながら、夜は高校の授業に出て真剣に勉強する生徒に触発された。もう一度勉強しなければ」と思ったそうです。

ここからが研究者としての道を歩くことになるのです。向上心を持って自分がやれることを実践していると道は開けるということです。

ノーベル賞受賞者の大村博士であっても、これまでの道のりは平坦ではなかったことが分かるものでした。「どれだけ周囲の人に助けられたことか分かりません。助けがなければ今はなかったでしょう」という主旨の言葉がありましたが、一人で達成できることはありません。うまく行かなかった時、「誰の責任」だとか「あいつのお陰でうまく行かなかった」などの発言を聞くことがありますが、物事を成し遂げた人は、全くそんなことを思うことなく「全ては自分」という考えを持っています。

自分が進んでいる道に問題が発生した時、「あいつの責任だから追い込んでやる」という考えをしているようでは「表面的には何の変化もありませんが、内心では人が離れていく」ことになります。ノーベル賞受賞者と同じようにはいきませんが、「実践躬行」の考えで行動したいと思います。

薬師寺まほろば塾

気づいたことはその日から実践する。これは自分でできることです。博士の講演を聞いて一歩一歩着実に前に進むためには、自分でできることをやってみることが大事だと教えられました。

気持ちの良い秋の日。博士の話を聴くことが出来たことは幸運でした。案内してもらったことに感謝しています。

また、進行を担当してくれた大谷徹奘師は、私達を明るく元気に励ましてくれました。

「かたよらない心。こだわらない心。とらわれない心。広く広く、もっと広く。これ般若心経、空の心なり」。唱える声が食堂内に響き渡りました。