活動報告・レポート
2023年8月24日(木)
問い合わせへの対応

問い合わせ内容

和歌山市の産業において、これまで住友金属、現在の日本製鉄は多大な貢献をしておりますが、今後、海外、例えばアセアン諸国も質の高い製鉄技術を獲得していくのではないかとの一種の危惧があります。20年後、30年後を見据えてインダストリーはどのような分野へのシフトと、また設備投資を行うのが賢明な策でしょうか?

お答え

これまでも、わが国は産業構造の転換を図り成長を目指してきました。全国的にサービス産業の比率を高めていますが、和歌山県は産業構造の転換に後れを取っています。

わが国が国際競争力を保っているのは高い技術に支えられた製造業ですが、現在の社会で高い付加価値を踏み出しているのはIT分野やサービス業です。和歌山県はサービス業の比率が、都心部と比較して低い水準になっていることが県民総生産にも影響を及ぼしていると思います。

ご指摘のように日本製鉄は紛れもなく基幹産業であり、和歌山県にとって代わる産業が見当たらないほどの大企業です。今後とも和歌山市にとって不可欠な存在ですし、企業と共存を図ることが必要です。

そのことを前提として、和歌山市を拠点としてくれている鉄鋼や電機などの基幹産業と長く共生関係を保つことが第一で、そこに先端技術やサービス業を増加させる取り組みが必要と思います。

AI、IOTなどの先端技術は、現代の社会において利益を生み出してくれるものであり、和歌山県も必要とする産業です。これらの産業は都心でなくとも誘致は可能ですから、和歌山県を拠点とする企業の誘致を進めているところです。

また和歌山県の産業に必要なものを列挙すると、次のようなものが挙げられます。

串本町で完成している民間ロケット射場は観光産業、製造業、研究施設などを誘致、発射場と併設することかできれば地域産業の核になり得ます。

南紀白浜空港の国際線化は、観光産業は勿論のこと、IT企業などの立地につながるものであり、産業構造転換に好影響を及ぼしてくれるものです。

海洋エネルギーの開発は他府県では実現できないもので、資源産業という新しい分野の産業を生み出すことになります。将来に向けてメタンハイドレートの開発の実現と産業化を目指した取り組みを行っていますが、これらのエネルギーの実用化を図ることができれば、これまでのわが国にないエネルギー産業が誕生することになります。

そして再生可能エネルギーの中でも、洋上風力発電は発電所を立地した地域において経済波及効果と雇用を生み出すため有力な産業となります。

そしてコロナ禍明けの今、他府県に遅れることなくインバウンド観光客を更に増加させることで、今まで以上に観光産業の活性化につなげることができます。世界遺産20周年を迎えた熊野古道と高野山は外国人観光客の柱となるもので、観光客を誘客することでこの分野での経済効果が期待できます。

ところで基幹産業の立地は地域に大きな影響を与えてくれますが、製造業に必要な面積の確保と価格などから和歌山市内への誘致は難しいので、先に示したように今後、期待できる産業を生み出そうとしているところです。

エネルギー産業、資源産業の創造、民間ロケット発射場に代表される産業の誘致。そして既に政策として実施しているAIやIT企業の立地などにより、産業構造の転換と利益を生み出せるしくみを創り上げたいと考えています。

設備投資に関しては民間企業が行うものであり、それぞれの事業主体が必要な投資を実施することになりますが、和歌山県は引き続き公共投資として、道路網などのインフラ整備や都市の再開発などの取り組みを進めていくことになると考えています。