活動報告・レポート
2023年7月28日(金)
Hの意味
Hの意味

和歌山市在住で、和歌山大空襲の体験をしている上原ハツさんと懇談する機会をいただきました。今日の懇談の目的は「和歌山大空襲の体験を後の世代に語り継ぐ」ことでしたが、話は意外な方向に展開しました。

懇談の中で、上原ハツさんの弟が渡米して以降、現在に至るまでアメリカで仕事をしていることを聞いたのです。

ハツさんの直ぐ下の弟はシカゴでビジネスを行っていましたが、ここで生活をしている日系人に情報を提供するために新聞を発刊していたそうです。この新聞は地元の評価を得て、執筆者にはシカゴ大学の教授も含まれていたことを聞きました。

またハツさんの次男は、長男がいるシカゴに渡米した後、アメリカで自動車修理の資格を習得して、ロサンゼルスに移り仕事を始めたのです。

その後、ロスでの信望が厚かったことから「南加和歌山県人会」の会長に就任して、長く和歌山県との国際交流に力を注いでいたと聞きました。和歌山県とロサンゼルスとの架橋になってくれたのが、上原さんだったことを知りました。

不思議なことに、上原ハツさんと懇談しているとき、ロス在住の次男から電話が鳴りました。次男は、90歳になったお姉さんのことが心配の様子があり「パスポートを取りましたか」と尋ねていました。

ハツさんは渡米する意思がないので断っていましたが、両親が亡くなった和歌山県でいるよりも、ロスに来て一緒に暮らす方がより豊かな生活ができると思っていたようです。

しかしハツさんは「パスポートを取る気持ちはありません。今さらアメリカには行きませんから」と、はっきりと答えていました。和歌山県とロサンゼルス。暮らす環境は異なっていますが、歳月を重ねても、兄弟が助け合う気持ちは変わっていないように思って嬉しくなりました。

そんなとき、ハツさんが言いました。

日本人の感覚だと、人はお互いに支え合って生きています。人という漢字がそれを表しています。しかし30年ほど前、次男は「お姉さん、人は支え合うことは必ずしも正解ではありませんよ。人はそれぞれが自立することが基本です」
自立した人が手を携えて、社会生活を過ごすことが人間なのです。漢字で人と書くと人と人は助け合うという意味に解釈できますが、英語ではHumanなので人はHです。Hとは、社会生活をするうえで人として自立することが前提であり、自立した人同士が手を携えることによって社会を築くことが大前提です。

ということです。

ハツさんは「当時、アメリカの価値が正しいとは思いませんでしたが、今になってアメリカの考え方が理解できます。 社会生活をしていくうえで、人は自立しなければならないということです。自立もしていないのに助け合うことはできませんし、社会は自立しない人が溢れた社会は、徐々に弱い社会になっていくと思います。今の時代の世界のスタンダードは、人は自立して手をつなぐことにあります。アメリカの価値と比較して、日本は大丈夫だろうかと思うこともあります」と話してくれました。

日本人が思う価値が世界のスタンダードではなくて、現代はアメリカ社会の価値が世界のスタンダードになっていると思います。次男が感じたアメリカ社会の価値を伝えたことは将来の日本のために必要だったのです。

ハツさんは言いました。「人が自立していない社会は、徐々にではあるけれど衰退の道を辿ります。まず個人として自立することで、社会に影響力を与えることができます。そんな自立した人が大勢いて、お互いに握手して腹の内を見せ合って、支援し合える関係になることが人間、そして社会なのです。今年10月にロサンゼルスから和歌山県に弟がきます。是非機会を見つけて会ってもらって弟の話を聞いてあげてください」と、話をいただきました。

人とHuman。意味は同じですが、人として優れた価値を示そうとすれば、日米の単語から派生する意味は異なります。

日本ではお互いに助け合うことが人であり、社会のあり方だと伝えているのに対して、アメリカでは自立した人間同士が社会生活を過ごしているのであり、そんな自立した人が手をつないでいる姿が社会であると伝えています。

強い社会は自立した人が大勢いて社会を形成していることです。強い社会だからこそ、弱者救済が可能なのです。弱い社会で生きていては、困っている人を助けることはできません。

社会で自立することが人のあるべき姿であり、社会的、経済的に自立しているから困っている人に手を差し伸べられる社会になるのです。

その他
  • 関西電力労組エリア支部大会定時大会に出席しました。一年間の活動を支えてくれたお礼を伝えると共に、今後の活動においても連携を図ることを伝えました。
  • 元同僚の皆さんと懇談の機会をいただきました。気持ちよく会って話をしていると、時間の経過を忘れる程でした。