潜水調査とサルベージを仕事にしている松田孝志さんが事務所を訪ねてくれました。このご縁をつないでくれたのは、友人が松田さんに「片桐さんという和歌山県議会議員さんがいます。松田さんのことを話したところ、松田さんの仕事に大変興味を持ってくれています。何でも片桐さんは小学校の卒業文集に『大人になったら冒険家になりたい』と書いたほど世界中を冒険したいと思っていた人なので、松田さんと話が合うと思います」と伝えてくれていました。
松田さんには僕の紹介と共にホームページを見てもらったところ「是非、片桐さんに会いたいので和歌山市に行きます」と即決してくれて、今日のご縁となったものです。
早速、事務所で世界の海で潜水調査をしている話を聴かせてもらいました。フビライハン、マルコポーロの時代から、スペインやポルトガル、イギリスが世界を席巻していた大航海時代の歴史を話してくれました。これまでの調査結果から歴史を辿っての話なので、冒険映画を観ているように楽しめました。
ユネスコの調査によると海底に眠っている沈没船は300万隻とされています。その船を発見して調査すると当時の生活や文化が蘇り「歴史のロマンを感じることができる」と話してくれました。確かに、聞いているだけで歴史のロマンを感じることができたので「何時間でも聴いていたい」と思いました。
今から300年前、500年前の生活や文化を知る機会はそれほど多くありません。歴史書で読むことはあっても、本物の300年前や500年前のモノに触れた人と出会うことは、まずありません。発見したモノの映像や写真を見せてもらうことや、説明を聞くことで当時の世界が想像できるほどでした。
マルコポーロやフビライハンの時代の沈没船を発見した物語は生きた歴史そのものでした。例えば、フビライハンの子どもであるコカチン姫は、マルコポーロと共に14隻の船団で大元を出航したそうです。東南アジアからインド方面を回って約18ヶ月を要してイルハン国に到着しています。
そして途中、立ち寄ったフィリピンでは、コカチン姫は海の神様として祀られていることを聞くとコカチン姫が現れたようで、その歴史が一気に手の中に納まるような感じがしました。
改めて歴史とは残されたモノからその人の行動を想像するものであり、想像できるから楽しいものだと思いました。誰も数百年前の人物に会ったことはなく、残された文章やモノから想像する以外にありません。海底に眠るモノに触れた人、現地で物語を聞いた人から聞く物語は知識と愛が溢れているので感銘を受けます。その語ってくれる歴史が正しいか正しくないかは問題ではなく、人間の生命を感じられる物語を想像して伝える力が素晴らしいと思います。歴史に登場する人物たちの生きる力を伝えてくれること以外に、偉人の凄さを知り、学べることがあるでしょうか。生きた歴史から学ぶとは、その人物の生き様を想像して伝えてくれる人から聞くことにあります。
年号や結果から学べることはなく、作者の想像で蘇った偉人の生き方や、作者が偉人に語らせる台詞から学べるのです。
松田さんの説明は、聞いている私達の想像力を掻き立ててくれました。この時間はその時代の中で存在していたのです。
そして和歌山県に来てくれたので、僕からは和歌山県の偉人の物語を伝えました。「陸奥宗光と和歌山」の講演会に登場する陸奥宗光外務大臣と坂本龍馬、海援隊と紀州藩との間で起きたいろは丸事件。小野田寛郎さんとルバング島。「記紀」に登場する神武天皇と名草戸畔の物語などです。
小野田寛郎さんが和歌山県出身であることや、いろは丸事件の一方の主役が和歌山県であることなどから「和歌山県の歴史はおもしろいですね」と伝えてくれました。
二人の話をまとめて「紀州から歴史を発見する旅を創る」ことなどを話し合いました。楽しみな企画が生まれそうです。