都庁を訪問したので近くのSOMPO美術館を訪ねました。ここにはゴッホの「ひまわり」が常設展示されているので、多くの人で賑わっています。今日「スイス プチ・パレ」の特別展が開催されていたので、合わせて鑑賞してきました。この特別展は「印象派からエコール・ド・パリ」へと向かう作品の流れを体験させてくれるもので、印象派からキュビスムへと当時の絵画の流れを味わうことができました。
新しい才能が次々と登場し時代を切り開いていった空気を感じることができました。古いものに縛られないで自分が感じたことをお決まり事に囚われないで表現する姿勢が、新しい時代を築いた力であり、時代の流れを加速された原動力につながったことを感じさせてくれました。
画家たちがその時代を築いたとは言えませんが、少なくとも時代の空気を創り出し、後世に時代の空気感を残してくれたことは間違いありません。印象派以降の多くの作品が残っているので、今の時代でも当時を感じることができるのです。
それは古いものに縛られないで新しい感性で時代を切り開いていく。恐らく「若い画家は何を描いているか分からない」「芸術ではない」などの批判を浴びながらも挫けることなく、前例に囚われない作品を誕生させたと思います。
当時のキュビスムの作品は、現代でも通用する新鮮な見え方を感じさせてくれますし、極端に抽象化することの困難さとセンスを感じさせてくれるものです。そこに見えているものを自分が感じたイメージに置き換えることは簡単なことではありません。そのものの特長を大きく描き他を切り捨てることは自分の内面を押し出すことであり、そのセンスで時代を表現しているので、時代の評価に晒されるわけです。無難な作品は批判が少ないと思いますが、キュビスムを理解してもらうのは、その時代に多くの国難があったと想像できます。
時代に埋もれないで残ってきた作品は、現代でも新鮮で埋もれるものではありません。時代を超えて評価されている作品は、その時代を切り開いた作品の特徴です。これは古いものが良くないと言っているものではありません。古いものや基本を受け継いで自分のモノとして消化し、そこから新しいものを創造すること。そんなことを繰り返していった時代の空気を感じました。
そしてゴッホとルノワールです。やはり多くの作品の中にあって、そこには特別な存在感があります。俳優の中で輝くスター、野球の四番バッターのような存在感です。この美術館で二人の作家の作品が輝き放っていた共通点は「温かさ」だと感じたのです。
「温かい」ものには人を惹きつける力があります。作風は違うけれど「温かい」ものを感じさせてくれる。それがこれらの作品が輝きを放っている要因ではないかと思います。
時代を超えて輝きを放っている作品には、大きな力があることを感じさせてくれました。画家が見て描いたその一瞬を切り取った光景は何気ない光景ではなく、そこに何かが宿っていたのです。その宿っていたものに魂を込めて描いて、観る人に、そして買ってくれる人に感じてもらおうと思ったのではないでしょうか。決して、生活のために、商売のために、ここにあるものを描いたのではないと思うのです。
こんなことを感じられただけでも、この美術館に立ち寄った価値があると思っています。芸術に触れることは人の心を豊かにさせてくれる。文化や芸術のあるまちには力がある。もちろん歴史や偉人を大切にしているまちにも力がありますが、そんなことを感じることができました。