活動報告・レポート
2022年9月2日(金)
舞台芸術「YUKUE鼓動」
舞台芸術「YUKUE鼓動」

主催者から案内をいただいていた舞台芸術「YUKUE鼓動」を鑑賞してきました。場所は兵庫県立芸術文化センターで、主催者の浅田耕平さんと高橋栄樹さんが迎えてくれたことに深く感謝しています。

この観劇は浅田さんから「舞台芸術作品を公演することになりました。私と高橋さんが協働で主催するので、兵庫県西宮市での開催になりますが是非来て下さい」とお誘いを受け参加したものです。

今回、脚本と演出は「せんす」さんが担当していることや、鈴木洋平さんが老人役として出演していることが特徴です。

演劇のテーマは重くて深い「死ぬことと生きること」です。事故によって半身不随になった主人公の「シン」と「こころ」が入院生活の中で何を考えるのか、何を思っているのかを取り上げています。作品作りにあたっては事故で障がいを負った二人の女性へのインタビューが基になっていると聞きました。

入院している二人の女性の周囲には「フリークス」と呼ばれる亡霊達がいます。さらに「鎖」と呼ばれる死の世界に誘おうとする亡霊もいます。「フリークス」は「治る見込みがないのだから生きていても仕方がない」と主人公達に囁き女性の心を弱気にさせていきます。「鎖」は呼び掛ける方法ではなく、身体を鎖でつなぐように自由を奪っていきます。

亡霊達は心と身体に働きかけて死の世界に連れ出そうとするのです。「死のう」と生きる希望を失っていく二人は地球と天界の間に陥っていきます。そこに90年以上生きた老人も死の淵を彷徨っていたのです。老人は二人に呼び掛けます。「生きていることは素晴らしい。どんなことがあったとしても、生きていることだけで素晴らしいのです。生きなければ、生きて、生きて」と魂の呼びかけをするのです。

一時は「フリークス」と「鎖」の呼びかけに応じて、生きる希望をなくし死ぬことを選択した二人ですが、死の淵で出会った老人の声によって見えていた「死の海」に背中を向けます。二人は気づいたのです。

「どんなことがあっても生きることを選択しなければ。生まれてきた日から今日までの日々は奇跡の連続であり、多くの人の支えを受けて生きている」ことに気づくのです。

両親、友達、恋人、そして治療を続けてくれる医師の支えがあることに気づき「人を悲しませるために生きているのではなく、支えてくれる人達を笑顔にするために生きなければ」と思うのです。

死の淵から帰還した二人に対して亡霊の「フリークス」達も「無くしたものを嘆くより、今持っているモノを大事にする」ことに気づくのです。持っているモノに感謝することで亡霊達は天界に行けることに気づくのです。

「フリークス」は失ったものに未練を残していたので天界に行くことが出来ずに、生きている人を死の世界に誘おうとしていたのです。

歯が無いフリークス、手が無いフリークス、この世に男がいなくなったと思っているフリークス、自分がリーダーと思い込んでいるフリークス、足が無いフリークス、目が見えないフリークス、共依存しているフリークスなどがいます。この亡霊達は無くしたものを得たいと未練をもっていたのです。

しかしフリークス達は、無くしたモノを補完するためのモノを捨ててしまうことで目覚めるのです。「今、持っているものを大事にしよう」そう気づいたことで天界に昇って行けるのです。

そして二人の少女は無くしたモノを嘆くより、ただ生きるために治療に専念することになります。生きる希望を見つけたこころと治療に向かう二人の姿を見届けた「カミサマ」は静かに天界に戻っていきます。

舞台芸術「YUKUE鼓動」 舞台芸術「YUKUE鼓動」

「生きることはそれだけで素晴らしいことなんだ」と思わせてくれる舞台でした。

案内してくれた浅田耕平さんと高橋栄樹さんに心から感謝いたします。ありがとうございます。