串本町に建設された民間ロケット発射場の「スペースポート紀伊」が完成したので見学に行ってきました。2016年11月に「宇宙活動法」が成立し、その後2018年7月に民間ロケット会社「スペースワン」が設立され、2019年2月に串本町にロケット発射場の建設が決定していました。その後、建設に着手して2022年に竣工したものです。
いよいよ和歌山県串本町からロケットが発射する準備が整いました。現在のところ今年12月に第一号機を打ち上げる計画になっています。人工衛星のクライアントも決定していることから、年内に打ち上げを見ることが実現する運びになっています。
ようやくここまで辿り着いたことを嬉しく思いますし、関係者のご尽力に心から敬意を表するものです。和歌山県と言えばロケット発射場があり「宇宙に最も近い和歌山県」を全国に発信することが可能となりました。ここに至るまでは長い道のりでしたが、串本町は「本州最南端」の町から「日本の宇宙最先端」の町となるわけです。
和歌山県には希望の持てる将来計画がありますが、年月をかけて順次、実現させています。串本町の民間ロケット発射場、白浜町の「南紀白浜空港」の国際線化、そしてビジネスジェットの発着陸が可能な空港化。高速道路の紀伊半島一周などのゴールが見えてきました。まだまだ県土発展につながる計画がありますから、将来に希望の感じられる和歌山県のスタートとなる計画が「スペースポート紀伊」だと言えます。
「和歌山県は先端技術が集積している県です」と言えるよう、後に続く計画を実現に向かわせたいと更に思いました。
さて「スペースポート紀伊」内は機密保持のため写真撮影が禁止されていました。現在、わが国のロケット発射場は鹿児島県の種子島と内之浦の二箇所だけですから、串本町は三箇所目の施設となります。民間ロケット発射場では初めてのことです。それほど機密保持の必要性がある施設だといえると思います。
ロケットは今年12月に初号機を打ち上げて、2020年代の半ばには年間20機の発射を計画しています。民間企業の小型ロケットの需要が増えているので、人工衛星を預かって宇宙に運ぶ機能を備えた「スペースポート紀伊」の役割は高まっていくと思われます。
またロケットの寿命は3年から10年だということで、一度打ち上げたロケットは数年ごとに入れ替えのため打ち上げることになりますから、ビジネスとしても有望な分野だと説明がありました。「スペースワン」として、アメリカの大手ロケット打ち上げの会社に引き離されないように「食いついていきたい」と心意気を語ってくれました。
但し衛星携帯の領域での人工衛星の打ち上げは現在の計画にはなく、通信衛星の分野ではアメリカとの競争には至っていないようです。
そのためアジアの衛星携帯の普及をどうするのかは課題として残っています。日本、台湾、そして中国がアジアでの衛星携帯の覇権争いをすることになるのでしょうが、現時点では、わが国が優勢に立つことは厳しい見通しだと感じています。大量に人工衛星を発射する施設がないことや緯度の関係で赤道近くの国に優位性があることなどの問題からの予測です。
さて現地では打ち上げ用のロケットと同じモデルがありました。ここでは「組み立てを繰り返して技術を確認する」ようです。また施設内は空調が効いているので「24時間空調を入れて温度管理を行っているのですね」と尋ねたところ「温度と湿度の管理をしています。ロケットは水滴をつけてはいけないので、特に湿度管理は重要です。24時間空調を行っています」と説明してくれました。
和歌山県が宇宙に最も近い県になる時が近づいています。私達の期待が高まります。
案内してくれた県職員の皆さん、串本町の皆さん、スペースワンの皆さんにお礼申し上げます。帰路、串本町のシンボルともいえる橋杭岩に立ち寄りました。ここでだけ見ることができる良い眺めです。