和歌浦で開業している「和歌濱かまぼこ」が今秋に新店舗を構えることになりました。新しい店舗の場所は元「丸濱かまぼこ」の社屋があったところなので「元の場所ですね。良かったですね」と話しました。「丸濱かまぼこ」は和歌浦の老舗ですが、数年前に惜しまれながら会社を閉じました。その味を引き継いでいるのが「和歌濱かまぼこ」で、「伝統の味を失うことはできない」と思った関係者が立ち上げた会社です。
伝統の味を受け継いでいることからお客さんが増え始め、製造能力を高めるために店舗を移転することになったのです。
ここまで来るには想像できないご苦労があったと思いますから「良かったですね」と言葉を伝えることが精一杯でした。
伝統は一度消し去ると復活させることは難しいことは言うまでもありません。伝統の味や伝統的な技術、そして偉人の功績など、一度途絶えてしまうと復活させることは困難なのです。この「丸濱かまぼこ」の味を失わないために、即座に「和歌濱かまぼこ」を創業したことは凄い力だと思いますし、元の場所に店舗を構えることはオールドファンにとって喜ばしいことです。
「丸濱」と言えば、かまぼこと天ぷらが代表的商品だったのですが、「和歌濱」もこの商品を売り物にしています。「製造能力を高めることになるので、販売力も強くしなければなりません」と挑戦する意欲を示してくれました。懇談している中で、伝統を護ることの意思と行動力の凄さを感じることが出来ました。
和歌山市内では若い労働力が不足しています。先週、某会社の社長から「正社員を募集していますが、どれだけ求人を出しても応募がないのです」という状況から声をかけてくれたものです。
求人の内容は「正社員として社会保険にも加入するのですが、現場の仕事なので人が集まらないのです」ということです。
そこで人材派遣の会社の方に相談したところ「和歌山市内には求人を出しても若い人は全くいません」という返事でした。20歳代から40歳代までの派遣の登録も少なく「現場の仕事での登録や希望は全くありません」ということでした。
詳しく尋ねたところ「若い人は現場の仕事はダメ、土曜日曜が出勤の会社もダメ。厳しくてもダメで、応募しても人が集まらない」そうです。
「では60歳で定年になった人はどうでしょうか」と尋ねると「今は定年延長で65歳まで仕事をしている人が増えています。60歳から65歳までの人は応募してきません。これまでは大手製造業が正社員を募集した場合、10倍近い競争になったのですが、現在は募集をかけても応募がないのです」ということです。
つまり「現場の仕事を募集しても、20歳代から65歳までの労働力がない」ということです。これは和歌山市の製造業の生産力に欠けるということです。
ですから製造業はコロナ禍で生産量を制限していますが、社会が元の状態に戻ったとしても「元の生産ラインには100パーセント戻らないと思います。現場で働く人がいないからです」という状況が水面下にあるのです。
コロナ禍を脱したとしても、和歌山市の製造業では働く人がいないことから元には戻らないという事態に陥っているのです。果たして「和歌山市の現場の仕事の技術力は大丈夫だろうか。製造業が進出してくれたとしても人材が集まらないのでは」と思わずにいられません。
そのためには時間がかかりますが、人材育成のための教育が重要になってきます。しかも、今から人材育成に着手しないことには企業進出が決まってからでは間に合いませんから、この課題を意識して対応しなければなりません。
皆さんのところを訪問、懇談する中で、表面的には気づきにくい和歌山市の課題が見えました。
先に訪問した「和歌濱かまぼこ」でも「魚をさばける職人、技術者がいないのです」という話を聞かせてもらいました。若い人は現場の仕事を敬遠する傾向にあることを認識して課題解決に向かいたいと思います。