宝塚歌劇雪組の「ODYSSEY」を観劇してきました。これは和歌山市を元気にする企画を考えている中で、宝塚とのコラボレーションがテーマにあがったためです。
言うまでもなく宝塚は日本が世界に誇る文化であり宝です。歌や踊りなどの技術はもちろんのこと、品格や教育水準、人間力など全てが一流なので世界に誇れる日本の文化だと考えています。
そんな宝塚歌劇は、歌唱力や技術だけでトップに立てるものではないことを聞きました。人に好かれること、人を惹きつける魅力が必要なのは言うまでもありません。ファンと会うこと、お礼状を出すこと、駆け出しの頃はチケットを売る力を持っていることなど、人としての行いや氣配りができるのかをスタッフは見ているとのことです。人気とは人を集められる力であり、明るさや親しみ、人と会うことや話し方などをトータルした人柄が重要です。
実力があっても自分のことだけ、周囲の人を助けない、チケットの販売には協力しないなどの人は人気がでないのです。人気が出ないと主役級に登用されませんから、結局、人に親切で周囲の人に好かれる人が階段を上っていけるのです。
これは宝塚の世界だけではなく社会の全てで通用する法則だと思います。そう考えると、実力とは技術力に人気を兼ね備えていることを言うのです。舞台を終えた後は相当疲れていると思いますが、舞台をつくってくれたスタッフに声を掛けることやファンとの交流などを実行していると聞きました。このように人気とは一夜にして得られるものではなく、心配り、人柄によって築かれていくものだと思います。
ところで舞台の細かなところも含めて一流を感じました。この舞台に立つために「どれだけの時間を費やしてきたのだろう」と思うと感動しますし、費やした時間が感動を創り出していると思いました。子どもの頃に宝塚を目指そうと思った時からの時間。宝塚を目指して練習に励んできた時間、宝塚に入校してからの時間、歌劇団に入って舞台が決まって時からの時間のトータルが第一の時間です。
第二の時間は、辛くて夢を諦めかけた心の時間、上手くいかなくて心が折れた時間、そしてレッスンの後に失敗したことを何度も繰り返して克服した孤独な時間などです。
第一の時間と第二の時間を合算した時間が感動の大きさになっていると思うのです。順風な道を歩いてきた人よりも、挫折や諦めかけた経験をたくさん持っている人の方が舞台で輝いていると思うのです。
輝くスターたちが躍動する舞台を観ながら、その裏側に潜んでいる費やした時間を思いました。
「ODYSSEY」は、長い冒険旅行を表す言葉だそうですが、世界各地を巡った冒険旅行の先に辿り着いた夢の世界は宝塚だったという物語です。そうです。冒険旅行をして世界を巡ったとしても、描いた夢を目指す基本となっている世界は自分を育て成長させてくれた人達がいる故郷、夢を描いて練習に明け暮れた故郷にあるのです。
基本を疎かにして目標を達成することはできないことを教えてくれています。
そして一人では何も達成できないことを、主役の脇を固める人達が表現してくれています。海賊王ブルームは月の女神セレネと太陽の神アポロンに導かれて世界を巡りますが、道しるべとなる人、行く先を見通してくれる人、励まして助けてくれる人の存在が目標を達成させてくれることを教えてくれます。このことを歌と踊りで見事に演出してくれていました。
人生も航海も、どんな人でも一人で成し得ることはできません。航海の目的を理解して支援してくれる人、旅先で出会うたくさんの人の助け、困難に直面したときに、明るく励ましてくれる人。そんな周囲にいる人達が、人生を行くべき方向に導いてくれることを歌と踊りで教えてくれました。
観劇後、友人達と「和歌山城ホールで開催したいですね」と話し合いました。和歌山市の文化の幅を広げたいと思います。