活動報告・レポート
2022年7月6日(水)
エネルギー研修会
エネルギー研修会 エネルギー研修会

今年に入ってからエネルギー価格の上昇や化石燃料価格の高騰、電力不足などの問題が継続して発生しています。節電ポイント案が出ていますが、これは本格的な議論になり得ません。そこで専門家の意見を聞くこと、質疑を交わすことを目的としたエネルギー研修を行いました。

国策であり国家安全保障ともいえるエネルギー政策なのに、発電設備を持たない新電力を生み出してしまったことも、電力不足の大きな原因だと考えています。繰り返しますが電力を含むエネルギーの確保と安定供給は国策であり、国家安全保障の範疇に入るものだと考えています。設備を持たない、資本力のない民間企業、しかも新電力の会社を興したばかりのところに任せようとする電力改革は、前述の国の責任を放棄したようにさえ思えます。エネルギー問題は国策ですから安定供給と設備保全、発電所の運転と保修など責任ある体制を検討すべきです。

そこでエネルギー政策の中核ともいえる原子力発電と廃棄物の地層処分などの現状と進捗についての説明を聞き、その後に質疑を交わしました。説明内容は割愛して交わした質疑を記載します。

1.地層処分が進捗しているフィンランドやスウェーデンは原子力の比率は高いのですか。

→ 両国の比率はそれほど高くなく、どちらも3基か4基程度です。またフランスやアメリカで原子力の比率が高くなっています。比率の高いフランスやアメリカでも地層処分場所は決定していません。
エネルギー問題は国策ですから国と電力会社が場所の選定を協議しているところです。
なおフィンランドとスウェーデンは高レベル廃棄物をそのまま地層処分する方式を採用していますが、日本は再処理をした後の高レベル廃棄物を地層処分する方式を考えています。この方が廃棄物の量が減量できますし、プルトニウムの転用ができないので安全保障につながります。
また日本は再処理を行うことを日米原子力協定で認められていることから、再処理が出来る国であることも北欧の二つの国との違いです。

2.文献調査に入っている町以外に処分場の適地はあるのか。

→ マップは公表していますが適地性は分かりません。文献調査から始めなければ、どこが適しているのか分からないので現段階で言うことはできません。

3.フィンランドは観光や農業、不動産の価値にマイナスの影響がないと説明がありましたが、国民の合意が図れていると考えればよいのですか。

→ フィンランドでは1983年から地層処分場の選定を行ってきています。そのため長い時間をかけて国が国民に説明してきたのです。スウェーデンの場合は1977年から国が国民に対して説明をしてきました。
そのため国民理解が醸成されていると考えています。勿論反対する人もいますが、最終処分場の選定ができたことは多くの国民のコンセンサスが図れていると考えています。そのため観光や農業の価値は維持できていると考えています。

4.フィンランドやスウェーデンの最終処分場は原子力発電所が立地している自治体に建設することになっています。つまり原子力の理解ができている自治体の方が立地は進みやすいと思います。この点は如何でしょうか。

→ 原子力発電と最終処分場では地元の理解が違いますからそうとは言えません。原子力の立地は合意するが最終処分場は受け入れないと考えている首長さんもいるので、原子力立地点に絞って理解を求めることはしていません。広く国民理解をいただけるように全国で説明会を行っています。

5.最終処分場の立地は時間との戦いの段階に入っているのではないですか。国民理解は必要ですが、時間を考えると同時に申し入れをすべき地方自治体も絞り込む必要性を感じます。100年後に最終処分地が出来ればよいと、ゆっくり構えているのなら別ですが。

→ 最終処分場は文献調査から開始して建設まで最短で20年はかかります。六ヶ所村での高レベル廃棄物の受け入れ期間は青森県と30年から50年と約束しているので、最初に受け入れたときが1995年なので、2045年には搬出しなければなりません。それまでの時間は23年となっています。
従って文献調査から建設まで20年が必要なため、文献調査開始までに残された時間は3年ということになります。2025年までに三段階の調査を受け入れてもらえるよう同意をもらいたいと考えています。

6.原子力立地の地方自治体が最終処分場を受け入れない理由はありますか。

→ 都会が発展するために豊富な電気を使っているのに対して、リスクは立地市、立地町が負っています。「何故、立地している市町がさらにリスクを引き受けなければならないのか」の思いがありますが、この感情は理解できることです。
最終処分場を原子力発電所に建設すればよいとの意見もありますが、処分場は一か所にする予定です。処分場を全国に分散してしまうと、建設費もリスクも高くなるから合理的ではないと考えています。

7.最終処分場の深さはどれだけ掘る必要があるのですか。

→ 法律では30メートル以上の地層に処分することになっています。

主に以上のような質疑を交わしました。