毎月一回開催している勉強会「令和会」に出席しました。今回の開催場所はレストランカフェ「デサフィナード」でテーマはわが国の所得水準、和歌山県の所得水準と企業誘致の必要性、そして和歌山県のIRと人材の空洞化などでした。
わが国の所得水準はOECD加盟の先進国中第22番目にあることは、ようやく知られつつあります。わが国の所得は「高い」と思い続けている、または勘違いしている人がいると思いますが、1980年代から世界は変化し続けているのです。デジタルやIT時代に突入してから久しく、情報通信や半導体を始めとする先端技術は日本から移転してからも久しいのです。
つまりデジタルやIT時代を迎えた世界の潮流に乗り遅れたことが経済力低下の原因であり、いまもキャッチアップできないでいることがわが国の経済的地位をさらに落としているのです。アジアの中では台湾や韓国に後れを取っていますが、まだ気づいていない人も多くいるように思います。この安閑とした空気が蔓延していることで「日本はこれからも大丈夫」「技術と経済では先進国」という思いを持っていると思います。
2022年の今日、アメリカの年間取得の平均が800万円台であり、日本は400万円台という事実がありますから、何が何でもこの位置から追いつくための政策が必要です。つまりデジタル化の進展と半導体や人工衛星や衛星携帯の開発準備、EVと水素製造などの産業が不可欠です。しかしどの産業に関しても先進国と比較すると「立ち遅れている」と言わざるを得ません。先端企業の技術や新技術の開発のスピードなどを知れば知るほど、その差はさらに拡大していると感じています。その差は追いつくどころではなく、拡大する一方であると実感しています。
和歌山県に漂う空気としては「まだまだ大丈夫」「何とかなるだろう」というものを感じます。
そんな感覚は今すぐ捨て去るべきで、先端企業に対して「来たかったら来ればよい」の姿勢は全く時代意識がない誤りであり、「絶対に誘致するという気概と誘致活動」が必要です。
誰かが本気で誘致の姿勢を見せないことには先端企業が来てくれることはなく、これからも重厚長大産業の撤退の場面を見ることになります。
地方都市である和歌山県の所得水準は東京よりも低く、もちろん最低賃金も現実の所得水準も低くなっています。僕の知っている東京本社で和歌山県に支社のない上場企業の30歳代の従業員さんの年間の平均所得は約1,000万円です。また東京本社で和歌山県にも支店のある企業の場合、本社勤務の20歳代の従業員さんの年間の平均取得は約1,000万円ありますが、和歌山支店の従業員さんの平均所得は約400万円です。
後者の場合、東京本社と和歌山支店の仕事内容に差があるので、その仕事の質の差が表れているものです。では和歌山県で東京本社レベルの仕事ができるかというと、残念ながら「できない」と言うことになります。同じ会社であっても東京と和歌山県の仕事レベルに差があるという現実があるのです。
「企業は従業員の給与を上げたら良い」という乱暴な意見があります。具体的な事例を示すとそれが現実離れしていることが分かります。
例えば和歌山県IRが実現したとします。この企業は世界レベルのため、ここで働く人の時給は高く設定されるので仮に約2,000円とします。和歌山県の時給は1,000円未満ですから、その差は1時間あたり1,000円になります。和歌山県の人がどちらの会社で働きたいと思うのかは明らかです。現在、特に和歌山市内で働いている人達は時給の高いIR施設内で働くことを希望すると思います。そうすると和歌山市内の産業の空洞化が起こり、サービス業を中心に働く人が不足することになります。人材がIR施設に集まり既存のサービス業の人材は不足することになるのです。
それを防止するためには既存のサービス業の経営者は、時給を2,000円以上に引き上げる以外に方法はないのです。こんなことができる会社、経営者は恐らく一人もいないと思います。時給2,000円に引き上げる余裕のある会社があれば、既に給与を引き上げているはずだからです。現実問題として、現状のままで「給与を上げるべき」の議論は成り立たないのです。
では既存のサービス業の雇用を守るために「IR施設で働く和歌山県内の人は時給1,000円に据え置いてください」と依頼することは本末転倒になります。いつまで経っても和歌山県の所得水準は上がらないからです。
これを解消するには和歌山県に本社をおいてくれる企業を誘致することや、デジタルやハイテク産業に名前を連ねる企業を誘致すること以外にありません。新産業の誘致以外に経済力、所得を向上させる方法はないのです。ですのでこの分野に全力を傾けるべきなのです。
時代に合わなくなった和歌山県での収益性の低い工場を無理に引き留めたとしても、所得水準は上がることはありません。僕の行動範囲の中で分かることは、取得水準の高い産業を誘致すること以外に所得水準を上げる方法は見当たらないということです。
ここに注力して行動しなければならないこと述べて、そのための行動をしていることも申し添えます。
- 本社移転に関する打ち合わせを行ったこと。この会社は令和4年3月に本社を移転する準備を整えています。社長から「和歌山県と県外の売り上げを比較すると県外の売り上げが圧倒的に多いのですが、片桐さんに県外に本社を移転させないでくださいと言われているので、県内に本社を残しました」と話してくれたことに感謝しています。
- 優秀な人材を紹介して欲しいと依頼がありました。早速、社長に紹介したところ気持ちが合致したことを嬉しく思います。親の介護の問題などがありますが、気持ちの会う人同士が一緒に働いてくれることを願っています。