活動報告・レポート
2022年1月21日(金)
プロの仕事と理念

「東京オリンピック2020」の選手村の管理の仕事をした会社の皆さんと懇談する機会をいただきました。世界が注目したスポーツの祭典ですから、携わっている人や会社にとって失敗は許されません。緊張する中での24時間体制の仕事をした経験は財産であり、この後に生かしてもらうことが大切なことです。

この業界の理念は「安全と衛生」だと聞きました。「安全と衛生を万全にすることが私達の使命であり最も大事にしている理念です。この精神を失うなら、この世界で仕事はできないと思います。特に日本は『安全管理と衛生管理』で世界一ですから、世界に訴える機会でもありました。スポーツの祭典ですが日本の安全管理と衛生管理の優秀さを感じてもらえたと思います」と話してくれました。

オリンピックの仕事を請けた皆さんの話は、日本人、日本企業の優秀さを感じさせてくれるものでした。メンテナンス業界がとても大事だと感じる数字があります。建物を建てた場合、取り壊すまでのメンテナンス費用はその建築費と同等の金額になるそうです。建築費イコールメンテナンス費ですから、建築物を維持するうえでメンテナンスはとても重要な仕事であることが分かります。

そして建築物の寿命が尽きるときまでメンテナンスが必要となりますから、継続して護り続ける技術と人材が必要となるのです。そこで業界として人材確保が重要で、専門の技術を持っている人がいなければ成り立たない仕事なのです。このことを示す数字が、売り上げの70パーセントは人件費であることが物語っています。

この会社の経営者は「人を預かっているのですから、会社と仕事を将来とも存続させることが絶対条件です。そのため利益が出るからといって簡単に仕事を請け負うわけではありません。仕事の内容、契約期間、仕事場所付近での住宅の確保などを重視しています。商品を取引する仕事とは違い人材を守ることが必要なので、例えば5年で契約が終了するような仕事は請け負いません。私達は請けた仕事と従業員さんとその家族に対して責任を持っています」という責任とプライドをもった話でした。

また仕事にプライドをもっていることは次のことで分かります。「渡された仕様書通りの仕事であれば他の会社と違いはありません。できることなら計画段階から協議をさせていただき、私達の経験に基づいてクライアントに意見を伝えます。業種や規模に沿ったメンテナンスができるように計画段階からアドバイスをさせていただいています。そうしなければ良い仕事ができませんし、良い状態で長く建物を維持することはできないのです」ということです。

建物の管理業務は、定型的なものではなくてオーダーメイドだというものです。決して予算だけで競争するものではないということです。参考までにメンテナンス会社は人口1万人あたり一社存在する計算になるそうです。東京の場合、1,400社ぐらいは存在しているので、仕事と人材で差異化しなければ生き残れないのです。競争が激しければ仕事のレベルが上がっていくように感じます。ですから単に「仕事をください」だとか簡単に「できます」とは言えないということです。

どの分野でもプロの仕事レベルと意識は「高い」と感じることができました。言われた通りに仕事を請け負うのと、意見を伝えて一緒に仕事を作り上げるのとの違いは予算が高い、低いの問題ではありません。その精神の元は高いレベルの「安全と衛生」を提供する意識であり、「安全と衛生」を提供できれば、お客さんや利用者は「快適でまたここを訪れたい」と思うことになります。決して華やかで表に出る仕事ではありませんが、見えない部分を管理する仕事ですから、安心して任せられる会社に依頼したいと思います。

業界の貴重な話を聞かせていただいたことに感謝していますし、いただいたご縁を大切にしたいと思います。

僕からは和歌山県政の取り組みとして、企業誘致と南紀白浜空港国際線化、そして和歌山県IRについて説明を行いました。一線級のレベルの仕事の考え方と姿勢を聞かせてもらったことで一流の人材と技術との連携の必要性を感じました。良いものを提供することで安心を提供することができる。そう思います。