活動報告・レポート
2021年12月11日(土)
新しい資本主義

三人の会合で日本経済の見通しを始めとする諸課題について話し合いました。共通していることは、世界と同じように日本経済はインフレに突入することです。既報の通りアメリカの物価上昇率は6パーセントと衝撃の数字が示されています。急激な6パーセントの物価上昇は生活を厳しくさせることになります。同様に所得が上昇すれば良いのですが、業界が平均して6パーセントの所得上昇は考えにくいので、生活に影響を与えることになります。さらに今後は資源価格が上昇すると考えているので物価上昇は継続することになると見ています。資源高騰とカーボンゼロの取り組み、そして感染症対策で通貨発行量が増加しているのは世界共通ですから、どうしてもインフレにつながる展開に入っています。

ただ先進国の所得は増えているのでインフレへの対抗ができる土台がありますが、日本はデフレ経済が続いてきたことから長い間インフレは経験していないので所得が上がっていないのです。平均所得は先進国の平均値より低く、経済協力開発機構加盟国(OECD)の中では22位と韓国より下位に転落し、物価は東南アジアの国より低くなっているのです。感染症が拡大する前にインバウンドで日本に来た観光客の爆買いが流行りました。爆買いは所得の低い国が日本製品を買いに来ていたイメージがありますが、実際は物価の安い日本に来て買い物をしていたのが正解です。

2021年のデータでは日本の平均賃金は3万8,151ドル(約447万円)で、アメリカの5分の3よりも少なく、18位の韓国は4万1,960ドル(約477万円)にも劣位しており、OECD加盟国の平均所得である4万9,165ドル(約559万円)も下回っているのです。日本は先進国中で上位だと思っている人が多い中、これは衝撃のデータです。

2021年の平均所得が日本より低い国は、スペイン、イタリア、ハンガリー、チリ、そしてメキシコなどであり、経済や国内情勢の安定していない国ばかりなのです。

ここまで低迷していることは、日本の平均所得の伸び率が低いことが証明しています。

OECDの1990〜2020年までの平均賃金の伸び率は、日本は107パーセントで過去30年間にわたり低迷しています。しかしアメリカの平均賃金は148パーセント、韓国は194パーセントであり、OECD全体でも133パーセントもあります。

つまり平均所得が上昇していない中、インフレになると生活が厳しくなるのは当然のことです。

平均所得が急に上昇することはあり得ないので、インフレなのに所得が上がらなければインフレ下の不況という恐ろしい状況に陥ることになります。インフレが見えているにも関わらず、更に国債を発行してお金をバラまくのは経済音痴なのかと思うほどです。

エコノミストの予測があたるかどうか分かりませんが、年間6パーセントも物価上昇が続くなら、今後10年で物価が2倍になるとも言われています。つまり資産価値が2分の1になるので金融資産が目減りすることになりますから、資産の防衛を考える必要があります。

日本の平均所得は韓国よりも低いこと、2020年までの30年間の平均所得の伸び率はわずか7パーセントですから、豊かな国ではなくなっているのです。そして円安に誘導するようなバラまくためのお金の発行をしているようではインフレに対応できません。当たり前のことですが、円安は輸入品の価格が高くなりますから、国内の物価が上昇することになるからです。

そして経済の専門家の言葉です。「新しい資本主義とは何なのかさっぱり分かりません。資本主義に新しいも古いもありません。資本主義は資本主義です」

経済を学んだことがある人なら分かることですが、資本主義の定義づけを変更するような新しいルールはまだ発見されていません。分配とは資金を投資できる人のお金をそうでない人に分配するものですから、それで経済が成長することはないばかりか、当市が縮小すれば経済成長を止めてしまうことになります。現時点で分配して経済成長を図る手段として見えているのは、国債を発行して配ることだけです。借金を増やしてそれを投資に回すのではなくて、消費してしまうのですから決して成長することはありません。消費してしまうことにお金を使って、投資に回さなければ成長しないのは自明の理です。

果たして「新しい資本主義」で経済成長するとは何なのか。現時点では分からないという結論です。