「宇宙教育の先駆者上野精一」さんの講義を行いました。新しく完成した和歌山城ホール4階の大会議室で、講義の案内をして参加してくれた小学生、中学生の皆さんに現代の偉人教育として上野精一さんの功績を伝えました。
元JAXA役員で和歌山県に宇宙教育の道筋をつけてくれた方です。大事業は10年単位で計画を決めていくものなので、和歌山県のロケット発射場が実現するのも全国に先駆けて宇宙教育を導入した土台があったからだと思っています。何もない大地に花が咲かないように、大事業の元になるものがあります。用地であり技術であり人でもあります。その道の先駆者がいたからこそ後の世に実現していくことになるのです。上野精一さんが串本町大島に立ったのは約10年も前のことでしょうか。「和歌山県はロケットを飛ばせる条件が整っている。宇宙に最も近い和歌山県を実現させたい」と話してくれたのは昨日のことのようです。
その後、政府やJAXA宇宙教育センター、筑波宇宙センターなどと難しい交渉をしてくれた結果、「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」を発足させ、和歌山県との間に「宇宙教育活動に関する連携協定」の締結を図ることになりました。
これらは宇宙教育として先駆的なものであり、夢の実現に踏み出した瞬間でした。僕もこれらの経過と結果を生み出す現場に立ち会うことができたことを誇りに思っています。負荷もかかったけれど夢の実現に向けて駆け抜けたような数年間でした。
これが平成22年度のことですから、今から約10年前の出来事です。10年前の宇宙の夢が和歌山県で実現しようとしているのです。僕が上野精一さんを現代の偉人と思うのは、実現が困難な目標に向かって一歩を踏み出し、そこから周囲と夢を共有させていく過程において夢を現実の計画へと導いてくれたからです。
政府やJAXAを動かすことは簡単なことではありません。和歌山県教育委員会と地元で主体を担ってくれた和歌山大学の調整と権限者の説得も簡単ではありませんでした。今も当時の資料を残していますし「大変だったけれど仕上げて良かった」と思っています。
そしてJAXAを退職した後は「故郷の和歌山県に戻って民間ロケット計画に参画することになるかな」と話してくれていたのです。僕は尊敬する上野精一さんと一緒に仕事が出来ることを楽しみにしていました。ところが退職した後に連絡が途絶えたので「変だな」と感じながらも「JAXAで大変だったから少し休んで次の準備をしているところだろう」と思っていたのです。
同年9月「上野精一さんが今年6月に亡くなった」と知らせを受けました。思いもよらぬ訃報に肩を落としたものです。その後、串本町ではロケット発射場の起工式から工事開始へと進んでいきました。起工式の時、JAXAの皆さんと懇談していると「上野精一さんはこの場に立っていたかっただろうな」と思ったものです。
そして上野精一さんが作った「宇宙(そら)へ」を聴き、「人生を宇宙に賭けた上野精一さんの志と功績を伝えていかなければ」と思いました。幸いにも「陸奥宗光外務大臣の功績を教育に活かす実行委員会」で故郷の偉人の教育の機会を作ってくれたことから子ども達へ故郷の偉人教育を行っています。
今回は「紀の国わかやま文化祭2021」の講演として「宇宙教育の先駆者上野精一」さんの講義を担当させていただきました。
参加してくれた子ども達に思いが伝わっていたら嬉しいことです。
Fプロジェクト主宰の「オータムコンサート」が開催されました。毎年楽しみにしていたコンサートですが、コロナ禍のため2年ぶりの開催となりました。しかも今回は「紀の国わかやま文化祭2021」のコンサートとして実施されたのです。スケールアップして開催されたことを嬉しく思っています。
今回は音楽と共に文化を楽しんでもらおうと企画して、隣の部屋に絵画や写真、書道作品を展示しました。僕も作品出展の依頼をいただき書で「龍」の作品を出展いたしました。ここでも「紀の国わかやま文化祭2021」に参加したことになるので「参加することに意義がある」ことを喜んでいます。折角、和歌山県で開催される時に参加する機会を与えてくれたので喜んで引き受けました。
オータムコンサートでの落語やコンサートは、いつもの日常が有り難いことだと思わせてくれました。参加している皆さんは、当たり前の日常が幸せな日々であることに氣づいたと思います。
落語で笑う、コンサートに拍手をする、文化作品を楽しむ。こんな当たり前のことが一年半も実現できなかったのです。いつもの秋を迎えられたことを嬉しく思いますし、来春もこの場所でコンサートが開催されることを願っています。
運営しているスタッフの皆さんの心の温かさと気配りに触れて、秋の午後が暖かくなりました。
企画、場所、人が揃って素晴らしいイベントになりました。今回もお招きをいただいたこと、楽しませてもらったこと、作品出展の機会をいただいたことに感謝しています。
森久美子先生のフラメンコ「もののけの森のマリア」を鑑賞しました。これも「紀の国わかやま文化祭2021」のイベントで、和歌山県の文化の香りを楽しめる企画でした。スペインのフラメンコを和歌山県で舞台化する中で森先生が構想を温めていた企画が「熊野」です。聖域である「熊野」をフラメンコで表現すると「こうなる」という渾身の舞台です。先生は「夢か幻か、それとも現実なのか」分からないような余韻に浸れる作品になるのが「熊野」だと話してくれました。「情熱のスペインの傷ついた風が聖地熊野に舞い降りる。そして心が蘇っていく」そんな物語です。熊野のガイドは八咫烏が担当しましたが、フラメンコで表現している様は必見です。
そしてスペインは華やかな色で表現し、熊野は緑そして白と黒を使い、文化を対比するように表現していました。そこに黄金の天照皇大神が登場して悩めるマリアに道を示してくれます。
それは「色取り取りの生き方を選択するよりも、自分の色に沿った生き方をすることが幸せですよ。熊野では心が表れますから自らの意思を大事にしてください」と諭しているように感じました。天照皇大神の黄金色が、熊野を訪れる人の心の中を照らし、自分の持っている一つの色にしてくれる。熊野の神が訪れる人の生き方を導いてくれているようです。
ラストのシーンはマリアが目覚めたことを示すフラメンコを見せてくれました。マリアを支える知念さんと山西さんのフラメンコは圧巻でした。再び蘇るための情熱の赤と力強い踊りは、スペインに戻るマリアの心の色だと思います。熊野で癒されて、以前よりも赤く燃えている心の色が見えました。老若男女と共に外国人の心も受け入れる熊野の奥深さも同時に表現してくれているように感じました。
西洋文化を日本の文化に融合させるだけでも凄いことです。極めて高い精神性が求められる熊野に融合させることは難しいことですが、森先生はそれを見事に融合させてくれました。フラメンコに神を登場させる発想と演出は簡単なことではありません。
森先生は「絶対に満足してくれる作品に仕上がりました。自信を持ってお薦めできます」と話してくれていましたが、その言葉通りの作品でした。熊野の持つ精神性と和の文化をフラメンコで表現している森先生のフラメンコの凄さを感じました。この作品を鑑賞して「どこまで極めていくのだろう」と思い、これからも続くこの先を更に見たくなりました。