平成21年3月に策定された「和歌山市水道ビジョン」について問い合わせがありました。
このビジョンの89ページには水道のバックアップシステムの構築として「送水ルートの多系統化」が以下の通り記されています。
「河西地区への送水は、新浄水場を河西地区に建設しない限り、紀の川を横断して供給することになります。その紀の川を横断する水管橋が1か所しかないため、被災時に備えて更にもう1か所の送水管を整備し複線化を図っていきます」とあります。
この時期、災害などに備えて系統の複数化を検討されていて、その計画をスケジュール化しています。この「送水ルートの多系統化」は既に検討の時期は終えており、平成30年度以前から実施する時期に差し掛かっていますから、何らかの対策が策定されていると思います。
寄せられた意見は「和歌山市では水管橋が一か所だけの状況は断水の危険性があることから、複線のルートを設ける計画を示しています。平成21年3月に公表しているように先見性があり、実行に移す計画になっています。このビジョンを策定した以降の検討状況について知りたいと思います」ということです。
水管橋事故が発生して問題点と対策を検討しているところだと思いますが、このビジョンが策定されていたことから予見性はあったように思います。どこで止まっているのか、止まっている原因は何なのかを知りたいと思います。
またこの「水道ビジョン」のスケジュールなどに無理があったなら、その検討結果に基づいて改訂しておくべきでした。改訂版がなければこのビジョンに基づいて計画が進められているものだと判断できるので、対策が実施されていないことはあり得ないことです。
平成5年4月3日に当時の和歌山市長である旅田市長に提言した「水道管の汚の問題」の公開質問状を届けてもらいました。驚くべきことに、今回の水管橋事故につながることが記されています。
この内容を要約すると次のようになります。
平成5年2月、和歌山市東長町の市道で水道管工事が行われていました。その際、水道管の中の写真を見る機会がありました。汚れた水管を見て驚いたひとが公開質問状を提出したのです。質問項目は次の通りです。
1.和歌山市の水道管の更生期限は何年としているのか。
2.水道水について、どのような検査項目を設け、どの程度の頻度にて、どこの水を採取し、検査しているのか。
3.その基準値はどのくらいなのか。又、その基準値に対し、当市の水道水の基準はどうあるのか。
4.最近話題になっている「トリハロメタン(発がん物質)」「TOX(有機ハロゲン化合物)」について、どのような判断をされているのか。
5.同封した写真のごとく汚れた水道水について、市は問題なしと判断されているのか。
6.市は現在の管理基準で十分と考えておられるのか。そうでないとしたら、どのような開発や研究がなされているのか。
市長に対して以上の項目の公開質問を行っていますが「回答がない」(平成5年5月当時)ということです。
和歌山市に対して水道水の品質、安全性や健康への影響の疑問を質問していますが、同時に水道管の更生期限も質問しています。所謂、水道管内のスケールが水道管の安全性に疑問を抱かせ、健康への影響を懸念しているのです。
このように水道管内部の腐食が進んでいることから、水道管の管理と更新をしていかなければ、将来の安全を確保できないことを指摘していると解釈できます。
平成5年から28年が経過しています。その後の経緯が明確になっていないので回答したのか、質問に基づいて水道管のあり方を検討したのか分かりませんが、当時、公開質問状に関わって、公開質問状の写しを届けてくれた方の記憶では「市長からも水道局からも正式な回答がなかったと思います」ということです。28年前のことなので水道局内に本件の記事は保管されていないと思いますが、市民の方が不安に感じて指摘していたことを軽く思っていたとすれば、その緩みが令和の事故につながったとも感じます。