和歌山県の観光談議になりました。感染症の影響によってインバウンド観光がほぼ「ゼロ」になっていることから観光地でお客さんを見かける姿は少なくなっています。例えば高野山でもインバウンドのお客さんが減少しているので「先週、高野山に行ったところ人影はまばらでお土産屋さんも閉まっていました」という状況報告をしてくれました。
そこで「以前から思っていたことですが実現できませんか」と提案がありました。 それは「高野山への車の乗り入れを禁止すること」の提案です。これは高野山観光の価値を更に高めようと前向きな思いから来ているものです。
「観光は大打撃を受けています。直ぐにインバウンドのお客さんが戻るとは思えませんが、将来に備えておく必要があります。世界の価値基準はカーボンニュートラルですから、世界の観光地の中では車の乗り入れを禁止しているヨーロッパの都市があります。また世界遺産の観光地では車の乗り入れを禁止して、EVバスに乗り換えて案内しているところもあります。地球環境を守る意識が高い人達は、カーボンゼロの観光地に価値を見出そうとしています」という意見です。
アンコールワットや王家の谷など世界的な観光地は、ガソリン車の乗り入れを禁止してEVバスが観光を担っています。世界遺産を訪れるのは意識の高い観光客ですから、不満の声はないと思います。
高野山は世界に誇る観光地ですから「高野山内は電気自動車やEVバス専用にすれば価値は高まる」ということです。世界の流れはカーボンニュートラルなので感染症後の観光地のあり方として検討することも「有り」だと思います。
同じ理由で熊野古道も電気自動車が似合うと思います。「カーボンゼロで楽しむ世界遺産の旅」は和歌山県だからこそ実現したい内容に思えます。世界各地を訪れた経験のあるこの提言者は「高野山は世界で5本の指に入る名所だと思います」と話してくれたように、世界が価値を認めた高野山と熊野古道に、新たにカーボンゼロの価値をつけることは和歌山県政の先見性と価値を高めることになります。
もう一つの価値が「高野熊野の自然信仰」にあります。「分け隔てなく全ての人を受け入れる」思想は和歌山県が育んできた独自の文化であり稀有な歴史なので、高野熊野が世界遺産に認定されているのです。表面の自然だけが世界価値ではなくて、世界はそこに秘められた精神性と平等思考が価値を認めたのです。
古より熊野信仰は全ての人を受け入れることを信条としてきました。老若男女は勿論のこと、病人や罪人、差別を受けてきた人など、全ての人を迎え入れた場所が和歌山県なのです。この価値こそ世界遺産としての価値であり、思想や信条、宗教で争いが絶えない世界において稀有な存在であり発信すべき価値なのです。
世界遺産イコール自然の価値と思っている限り、高野熊野を発信することはできません。自然信仰の神秘性と精神性、平等で平和な世界が誇るべき価値なのです。国内だけではなくて世界からお客さんを受け入れること、今まで以上に多様化している新しい人権の価値を受け入れることが求められています。
果たして、感染症が収まった後の世界はどんな姿なのか分かりません。これまでのような観光が再開するのか、近距離観光になるのか、または動かないのか分かりませんが、その次の世界に対応できる価値を見つけて、今から情報発信をしておくべきだと思います。
基本的なことですが、観光とは光を観ること。その光は地元にいると発見しにくい性質があり、外からの視点で観ることで発見できます。和歌山県の光とは何なのかを考えて、観光和歌山県を発信したいと思います。