和歌山県でも感染症の方が増え続けています。感染者の数や病床利用率などから、もう第五波に突入している状態なのは間違いありません。関西で和歌山県と奈良県が緊急事態宣言の要請もしていませんし適用もなされていません。
人の流れが止まっていて感染者が減少していれば良いのですが、残念ながらそうはなっていません。飲食関係者によると「令和3年の4月と5月を比較すると、人の流れは多くなっています。顕著なこととして、和歌山県民は真面目なので外食していないのです。人の流れを作っているのは他府県から流入している方々です」ということです。
分析では和歌山県民の皆さんは外出を控えていますが、他府県は緊急事態宣言が出ていることから規制の緩い和歌山県に来ていることになります。但しこれは統計ではなく、現場感覚であり、言語データです。有意な統計も大事ですが、有事の時は現地で働いている現場感覚がもっと大事だと思います。統計や数字の積み重ねで分からないことが現場で起きているのです。現場からの意見を聞くこと、現場を訪れることなくして政策はありません。既に行政の担当箇所には現場からの意見が届いていると思いますから、その感覚が欠けているように思います。
「他府県から人が流れ込んでいる」という現場で起きていることの言葉を信じないで、「統計データの調査結果が出るのを待って対応する」ような対応は県民、市民を信用していないこと。そして安全を守る視点が失われていると思います。
もう飲食店を始め県外から流れ込んでくるお客さんの対応をしているお店が危険に晒されている期間は長くなっています。それでも国に対して緊急事態宣言を要請しない理由を尋ねて得た回答を教えてもらいました。和歌山県も和歌山市も「コロナを抑え込んでいる自信がある」ということです。今日、この回答の理由を聞いて驚きました。
「9月1日から、医療逼迫を避けるために感染者用にホテル東横インの部屋を約150室確保できます。医療崩壊は防ぐことになるので感染者増加を解決できる見込みです」ということなのです。軽度の感染者のためにホテルの部屋を確保できるので自信があるという回答を聞いて「本気だろうか」と驚きました。
家族間の感染者を増やさないための対策として効果があると思いますが、このことが抑え込む自信になっている感覚が理解できません。
先制防衛という言葉があります。攻め込まれたから防衛するのと、攻め込まれる前に防衛のための先制攻撃、つまり先手を講じることでは効果も費用も格段に違いがあるのです。この感染症対策は先制防衛ではなく、攻め込まれている状況で最前線の意見を聞かないで取った防衛方法です。攻め込まれている現場の状況報告を受けているけれど、守りを固めているからこれ以上崩れない自信があるということです。
第五波に入って感染者は増え続けていることや、病床利用率が95パーセントを超えている状況からすると国に対して緊急事態宣言の要請をする時期に入っていると思います。むしろ感染者が過去の感染波よりも拡大していることから、現場の多くの皆さんの意見としては「要請が遅い」と感じるほどです。
現場の声を聞いてもらえない。現場と行政の感覚が違う。他府県からの人の流れは止められていない。こんな声がたくさん届いていますが、行政は現場の意見を何とも思わないのでしょうか。行政組織の担当部課からトップに言うことはできないのでしょうか。現場感覚とのズレがあるように感じます。
そして「何を言っても無駄だと思うようになっています」「支援は期待できないと思います」「厳しい意見が届いていると思うけれど国に緊急事態宣言を要請してくれない理由が分からない。説明して欲しいです」など意見が増えてきています。
この「苦しさを聞いてくれない」のムードは地域の力を沈めてしまう効果があります。飲食店を始めとする皆さんが「売り上げも自信があるし、感染しない自信もある。感染して入院することになった時のためにホテルの部屋を借りてくれたから安心できます」ということが根底になっていれば良いのですが、現場の思いはそれとは違います。
皆さんからの意見が行政に届いていないのであれば、やはり届けることによって動きにつながるようにしなければと思っています。現状を踏まえての意見交換と、現場の声を届けてくれている皆さんにお礼申し上げます。