活動報告・レポート
2021年8月27日(金)
幕末と明治維新
幕末と明治維新
幕末と明治維新

安田女子大学の竹本知行先生と大阪観光大学の久野潤先生が和歌山市に来てくれました。JR和歌山駅で合流して岡公園の「陸奥宗光先生乃像」の見学を行いました。

丁度、銅像建立50周年であることを伝えていたので「銅像の周囲に足場を組んでいるので先生に触れることができます」ということで案内しました。紀州の偉人の像に触れた先生方から、紀州の優れた歴史を聴かせてもらいました。藩政改革や徴兵制などの紀州モデルが全国に展開されていった歴史です。当時の資料から「大阪や名古屋、東北にまで人材が行き渡っていたことが分かります」ということでした。明治維新後の国づくりに紀州の人材が活躍していた事実を伝えてくれました。

認識を整理すると、明治維新は一気に改革を果たしたのではなく、徳川幕府を支えた人材が新政府でも組織運営の役割を担い実務者として運営を担っていたということです。大臣級には明治維新の立役者の名前が並びますが、行政機構は一昼夜にしてできるものではないので、幕府の要人が役人として力を発揮したそうです。つまり幕末の江戸幕府は決して弱体化していたのではなく人材が揃っていたということです。先生の言葉を借りると「優秀な人材の宝庫だった」というのです。考えてみると幕府は統治機構ですから、優秀な人材が集まるのは必然のことです。

幕末と明治維新

明治維新によって体制が変わりますが、新政府スタートから10年ぐらいは幕府の人材が役人として参加し、明治政府の軍と武士階級が国を護っていたと説明してくれました。それは明治10年ごろまで武士階級が軍の過半数を占めていたようです。

またペリーの黒船に関しても研究、シミュレーションを行い辿り着いた説を説明してくれました。黒船は海岸線から約4kmの海上に停泊しました。当時の大砲の性能からすると射程距離は長く見積もっても約3kmだったそうです。つまり黒船が砲撃したとしても陸地には届かなかったことになります。幕府は攻防ラインを陸地から1kmのところだと計算して、戦闘する場合は「陸地から1kmの位置に船で出撃して迎え撃つことを想定しました。黒船から隊が出撃しますが、その船の射撃砲は前方に一門あるだけなので機動力に勝る幕府の船は横から攻撃することで勝てると見込んだのです。

しかし戦うことを選択しませんでした。このことは幕府に人材がいたことを示しています。黒船との戦いは勝てるとしても、その後米国など列強から船団が押し寄せることになります。それまでロシアなどから船団が来ていた事実から想定した結果です。列強諸国を相手にした戦いとなれば「幕府は敗れることになり植民地化されてしまう」と計算したのです。

独立国家にその選択肢はありませんから、戦うことを避けて国を護るためには開国、つまり明治維新が必要だったわけです。幕府に人材がいたので、これぐらいの読みはできたのです。

明治新政府に幕府の人材が登用された理由がここにあります。薩長は、巨大組織を運営したことのない人がいきなり統治することはできないと理解していたので明治維新派クーデターではなかったということです。

ここで日本人のバランス感覚と将来を見通す力を感じます。戦わずして勝ちに導くことと、国力を保つためには新政府が必要だったことを見極めていたのです。明治の元勲と共に幕府の底力が重なって新政府を運営していくことになっていくのです。無血開城から新政府に至る歴史はクーデターではなく、体制の見直しを図る実に優れた変革だったのです。日本人の凄さを感じる解説でした。

この流れは史料に基づいて研究した結果ですが、通説と異なる部分もあります。史料から読み取る力、推測によって歴史の捉え方が違うのは、その時から現代に至る歴史を踏まえて歴史を構築していくからです。歴史はその時で完結しているものではなくて、続いているものなので時代に応じて解釈が変わっていくことはあり得ることです。

そして大切な視点は経済から歴史を見ることです。経済政策を伴わない統治改革はないということです。お金の動きを見ることが歴史の出来事の本質を理解することであり、お金の動きを制御できなければ統治できていないことになります。つまり地域によって自由な経済対策ができるなら統治機構はいらなくなるのです。それでは国家を運営することができませんから、経済を把握することが国家と言えます。

日露戦争でロシアに勝てたのはお金を工面できたからです。当時のロシアの国家予算は日本の約6倍で国内総生産も約6倍だったそうです。これで戦争をしても勝てることはありません。そこで国家は金策に走るのです。お金で対等になった機を契機として戦いに入り、勝利につなげるのです。経済、つまりお金を生み出すことが国力なのです。やはり歴史は現代に通用するものだと感じました。

その他
  • 障がい者デイサービスでスタッフの皆さんと意見交換を行いました。感染症対策と今後の運営に資することにつなげます。
  • 安田女子大学の竹本知行先生と大阪観光大学の久野潤先生を岡公園の「陸奥宗光先生乃像」に案内しました。故郷の偉人を案内、紹介できることは誇りになります。
  • 障がい者家族の会の準備会とZOOM会議を行いました。困っていることや解決に向けた取り組みなどの意見交換を行いました。