活動報告・レポート
2021年8月12日(木)
法解釈

法律は解釈が大事です。法律や条令などの条文を基にして実務的に規則を定める基準が制定されていることがあります。条文は表現が固いのですが、多くの法律は完全に「こうしなければならない」というものではなくある程度の裕度を持たせています。そこで実務を遂行していくために内規や準則などの規則や上位省庁からの通達に基づいて仕事を進めているのです。現場では規則や通達などに基づいて仕事を進めているのですが、解釈が難しい場合は協議事項として取り扱います。この協議の場では、事例の法解釈の考え方が問題になります。この場合の考え方は様々だと思います。

  • 法律を確実に守る立場で解釈をする。
  • 前例を基に幅を広げて考える。
  • 現場を調査して周辺環境と合わせて規則を適用する。
  • 個人の権利を必要以上に侵害しないように適用を考える。
  • 規制が強すぎると私権の制限につながるので最小限に留めるように解釈をする。
  • 公平と公正を基にして直近の類似事例と同じ尺度で考える。
  • 社会情勢の変化を鑑みて前例にとらわれない適用を行う。

このように書き出せば考え方は数多くあります。ですから担当者の価値観によって解釈が違ってきます。役所本位で無難な仕事をするのか、県民や市民の皆さんの要望や権利を実現させるように解釈幅を持たせるのかは個人の裁量にゆだねられています。

担当者の裁量と共に大事になることがあります。それは要望する立場の人が、現場と法律や規則を知ったうえで「このような考え方をして要望にきました」という姿勢を持つことです。何が何でも「やらせる」という上からの態度ではなく「私はこんな考え方に基づいてお願いしているので協議に応じてもらえませんか」という提案が好ましいと思います。勿論、役所に対して低姿勢になる必要はありませんが、行政は法律に基づいて仕事をしていますから、それをクリアできる条件を示すことが大事なことなのです。
役所の担当者に対して「私はこれをやりたいから法律を曲げる」だとか「役所ができるように考えるのが当然だろう」という姿勢では前向きに進みません。理論づけを拡大解釈させるのは信頼と感情ですから、依頼する立場の人はその土台を築かなければなりません。
「このことに関して法律がありますが、今までの解釈を適用されると現場は困ったことになります。私は現場と置かれた現状から考えてこんな解釈ができると思います。決して無理な解釈ではないと思いますので、実情を踏まえて協議してください」と依頼することが、これまでの経験則からすると良いと思います。上からの視線ではなく、お上に上申しますという低姿勢でもなく、「一緒にうまく行く方法を考えてください」という依頼です。
行政の担当者は敵ではなく味方だと思ってください。役所の担当者が法律に基づいて公平で公正な適用を行うのは社会の秩序を守るためです。社会の秩序を保ち当該地域周辺の安全が確保できると解釈できるなら、私権の制限を最小限に留めてくれることも可能です。地域社会の安全性を損なうことや、誰が見ても明らかに法律に違反するような現状になってしまう場合の法の拡大解釈は無理ですが、今よりも安全性が向上することや、この程度の変化であれば社会の秩序が保たれる場合、依頼者との信頼関係とお互いの感情が安定していることが仕事を進める上で大事なことになります。
「議員に頼みに来る」事例があるのは、無理を押し通すことや法律を捻じ曲げることを求めているのではなく、既に役所との信頼関係が築かれていて、現場の現状を調査したうえで関係する法律や条例などの法解釈を勘案して論理的に説明できる力があると思ってのことです。

お盆前の時期ですが、仕事に出て来ている担当者の方と上記の考え方に基づいて協議を行いました。同じ価値観を有して協議に応じてくれたことに感謝しています。