活動報告・レポート
2021年6月5日(土)
生産者との懇談
生産者との懇談
みかん

みかん農家を訪ねて法人経営者と懇談しました。過日、知人から「素晴らしい考え方を持っているミカン生産者がいます。一度会ってみてください」と紹介を受けたので、現地を訪ねてきました。作業の合間の時間をいただいて懇談したのですが「今日、この人に会って良かった」と思うほどでした。

懇談の途中で「みかんには生産者の人柄が表れる」という話がありました。興味深いことなので懇談を深めていきました。

「生産者の人柄がみかんに表れるのです。その人のそれまでの人生がみかんという果実に表れています。嬉しかったことや楽しかったこと。頑張ったことや裏切られたこと。悔しい出来事やこれまでつきあってきた人など、全てが果実となって表現されています」ということです。

つまりみかんは単なる果物ではなく、その人の人生が詰まっている結果の産物だといえます。

みかんの甘い、酸っぱいなどの味は生産者の人生が反映されているようです。

「実は生産のやり方は人によって違います。机上で学んだことは基礎ですが、実際の現場は応用なので基礎力より応用力の力が強くなります。育苗や木の育成、農薬の使い方、管理から収穫までそれぞれのノウハウがありますから、収穫されたみかんは全て味が違います。味に違いがあるから飽きないし、時にはおいしさの発見があるといえそうです。

和歌山県のみかん農家には優れた人がたくさんいます。日本一だと思う人もたくさんいます。それらが集まって和歌山県産のみかんがブランドになっているのです。みかんづくりの名人もいますし、育苗の名人や剪定の名人もいます。皆さんの力をトータルしておいしいみかんが生産されています」ということです。

味は主観なので人によって違うと思いますが、和歌山県産のみかんは「全国一おいしい」と思います。それは和歌山県には名人がいることと自然条件に恵まれていることも要因です。農地がみかん栽培に適していることと名人がいることによって日本を代表する産地の地位を確立しているのです。

味づくりは追及していますが、和歌山県みかんの品質は十分に高めていますから、課題は品質のムラを解消していくことだということです。おいしい味を均一化することは簡単なものではなく、名人級に向かって追及しているものです。味は雨量、日照時間など自然条件によって違ってきますから、自然を相手にして人が勝ち抜くことは容易ではないのです。そのためどんな条件であっても品質を高め維持するためには「努力以外にない。逆に言うと『努力する』という言葉以外で表現することはできません」ということです。

さてこの経営者は「私はこれまで実績を積み重ねているので、実績を基に話をすることが出来ます」と話してくれました。実績とはみかん作りの土台であり、土台が固まっているので、みかん作りに関して人に説明することができるまでに至っています。

そしてこの「説明できる」ことがとても大事なのです。説明できるためには実績が必要だからです。みかん作りに実績のない人が「みかんの作り方を講演します」と言っても人は集まりません。積み重ねてきた実績がモノを言うのです。これはどの分野の仕事でも該当することです。その分野で実績のない人が、その分野の講演をすることはあり得ないことです。やったとしても相手にされませんし、説明と説得することは到底できません。

みかん

これからの課題は「地域で連携すること」だそうです。地域力を高めることがブランド力を更に高めることであり、生産者の所得を増やすことにもつながります。所得を増やすことが大事なのは「みかん農家は設備投資が必要なのです」ということからです。設備投資をしなければ良い商品を供給できないのです。しかもこれまでの一次産業だけの時代から六次産業の時代へと変化しています。この六次産業化につなげるためにはノウハウと投資、経営力が求められます。

個人から法人化、しかも生産者と経営者の双方が必要な時代へと入っています。生産ノウハウの伝承、後継者作り、地域力を高める取り組み、地域ブランドなどの講演など、これまでのような生産に尽力するだけではなく、地域での人材育成が必要になっています。

そして最も大事なことは「義理と人情」だということです。農家でも企業でも地域でも「義理と人情」があるから生産活動、そして安心した生活が出来るのです。裏切る人が蔓延っている地域、企業が繁栄することはありません。助け合うこと、支え合うことなど信頼関係があるところは繁栄し、裏切る、騙す人がいる地域や企業は早晩衰退していきます。和歌山県みかんのブランドは信頼の実績が積み重なってきた結果です。これからもブランド力を維持するためには、同じように実績を積み兼ねる必要があります。これを怠ると「ブランド力を維持することはできません」ということです。ブランド力を保つには、これまでと同様、それ以上の努力の継続が必要となります。厳しいけれどやりがいがある。そんな会話を交わすことができました。

その他
  • 道路の側溝の不具合現場の調査に行きました。市役所でも自治会でも管理していない道路の一部ですが、この部分は開発事業者の後工程だと思います。仕事は後工程を確実にして仕上がりますから気を付けたいものです。
  • 文化に触れる機会として、和歌山県橋本市出身の辻本好美さんの尺八の演奏を楽しみました。和と洋の組み合わせに参りました。素晴らしい演奏会でした。