活動報告・レポート
2021年6月1日(火)
和歌浦の価値
和歌浦の価値

和歌市在住の方が首都圏の方から「和歌浦ってどんなところですか」と聞かれた時のことです。どれだけ説明をしても和歌浦の景観をイメージしてくれなかったようですが、万葉集の山部赤人が詠んだ歌を言うと「あっ、その歌に詠われた美しい景観の場所なのですね」と答えてくれたと聞きました。

その歌は「若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺を指して 鶴鳴き渡る」です。

優れた景勝地であることをイメージしてもらうのに、万葉集が役立ったことを話してくれました。そこで「万葉集に詠われた景勝地の和歌浦は、やはり和歌山市の誇りです」と自信を持って話してくれたのです。万葉集で詠われた歌の場所だというだけでイメージできる和歌浦の凄さを感じる話です。

万葉集で詠われた景勝地のある県は多くはありませんから、名勝であり日本遺産である和歌浦を、今更ながら誇りに思います。そして万葉の時代から和歌浦に関する記述は少なくなりますが、江戸時代に至るまでずっと都人たちの憧れの地であったことを研究で記している学者もいます。

今でいう保養地であり、都人たちがオフを楽しむ場所だったかもしれません。潮の満ち引きや海に浮かぶ月の影など、海のない都人にとって今の時代の映像を楽しむような感覚だったかもしれません。

ところで名勝指定と日本遺産に認定を受けている和歌浦でその両方から外れているのが「旧福島嘉六郎邸」です。聞いたところによると、この邸宅は昭和4年に建てられたもので、当時の「和歌山綿布」社長であった福島嘉六郎さんの別荘だそうです。

この敷地内で邸宅の背後にある伽羅岩は「かつての海岸の名残で貴重なもの」との説明を聞かせてもらいました。

この場所を後世にまで残すことが「万葉の時代に詠まれた和歌浦の原風景を残すことにつながります。貴重な伽羅岩を壊すことや、この地を開発するのではなく名勝指定や日本遺産区域に指定すべき価値があると思います」と説明をしてくれました。

邸宅も貴重な建築物だということですが、背後の伽羅岩は往時の海岸線の名残を留めているもので、守るべき景観だということです。

景勝地である和歌浦の景観を壊さないで、次の時代に残すことは和歌山県としてやるべきことだと思います。その一つが「旧福島嘉六郎邸」と伽羅岩だということです。

また、近くの不老橋は景観論争が起きた地域です。この時に「歴史的景観権」という新しい価値を認めるか否かの論争が起きました。結果として認められなかったようですが、このことが歴史的景観の価値を認識させてくれました。まだ「歴史的景観権」という権利はありませんが、和歌浦の景観の価値は歴史的景観価値を有しているものだと考えたいところです。

しかし時代は景観を価値あるものだと認識するようになっているのも事実です。「景観に配慮しながら」「景観を守りながら」などの言葉が行政の用語として度々でてくるようになりました。各地方自治体で制定されている「景観条例」もその価値が認められた一つの事例です。景観の中に自然と共に、歴史的な建築物も含まれていると解釈することも珍しいことではありません。景観の価値を見直した出来事が和歌浦の不老橋論争が起点かもしれません。

私達は日々、新たな発見と昨日とは違った動きがあります。新しい発見したことを「何故、その時に分からなかったのか」と思うことは間違いです。新しく見つけたものなので新たな発見というのです。歴史に生きた人はみな、その時を懸命に生きて時代をつないできてくれました。令和の時代に新しい発見をしたのであれば、ここに新たな名勝の価値を付け加えていきたいものです。万葉から令和へと引き継がれている価値を認めることができれば、和歌浦の価値はさらに大きくなります。

支援制度の説明

和歌山市内の飲食店の方々に「営業時間短縮要請協力金」と「飲食・宿泊・旅行業給付金」の説明を行っています。ふたつの支援制度があるので漏れのないように、記載誤りがないように伝えています。休業または時短に協力してくれているお店の方々からはお礼の言葉を頂戴しています。現地で説明することによって支援に込めた思いを分かってくれることもあるので、引き続き説明をしていきます。

飲食店の取り組み

飲食店の方々と懇談しました。コロナ禍における飲食店の連携と強化に関して「今後のことを考えて情報交換や連携する場を持つことが大事」だと意見交換を行いました。これまでは単独、または交流のあるお店で協力してきた側面がありますが、今後は飲食店の垣根を超えた連携方法を模索したいということです。

コロナ禍においてよかったことは、お互いの顔が見える関係になれたこと、お互いの考え方を知る機会につながったことだそうです。業態を超えて、地域を超えて話し合える関係構築が出来たことで、今後は連携を取りながら県に意見提起をしていくことなどを話し合いました。

説明会

地域活性化の構想の説明を聞かせてもらいました。地域にお邪魔して「この場所に子ども達が集まって賑やかになることを考えています。地域の皆さんに喜んでもらえて、子ども達の健全育成につながる構想です。集まってくれた皆さんに聞いて欲しいと思います」と挨拶の後、構想を聞かせてもらいました。

全国的にも例が少ない事例なので、まず地元の皆さんの理解と賛同、事業主体の確立、継続するための収益モデルの検討などから始めることになります。発起人の話を地元の皆さんと一緒に聞かせてもらったので、次回は具体的な計画案、図面ができてくると思います。長期的な視点で検討したい構想です。