活動報告・レポート
2021年4月13日(火)
交渉事
交渉事

アメリカでのビジネス経験の豊富なAさんに、交渉する相手に求めることは人柄だと思うので「それはアメリカ人でも同じですか」と質問したところ、「アメリカ人でも同じですよ。人柄が信頼になります」という答えでした。

先輩はアメリカの大学を卒業後、東海岸でビジネスの世界に入りPAの仕事を中心にアメリカビジネスの世界で生きてきました。

その後はアメリカ政府の役人として日本の、主に経済産業省を相手に交渉する立場にいた経験を持っています。日本人でありながらアメリカ政府の役人として日本と交渉してきた時の感想は「日本人、もっとしっかり主張してくれよ」ということです。母国がアメリカ側の主張に反論できずに受け入れてしまうことを情けなく思ったそうです。

これは「よく言えば日本人は相手を受け入れる容量が大きいこと。悪く言えば波風を立てないで納めること」を意味しています。寛容な日本人として良い面でもあり悪い面でもあります。国際ビジネスの場面では自分の立場を主張することが大事なことですから、寛容さを持って受け入れながらも、自社の利益を守るために主張することが求められます。

一見、当たり前で簡単なことのように思いますが、国際感覚がないと難しいことです。なにしろ相手は「交渉や契約はビジネスジェットで移動して一日で済ませてしまう感覚」を持っているので、スピードと決断力が求められるからです。日本社会の慣習に慣れている私達にとって、これは簡単ではありません。まず「ビジネスジェットで来る」ことで先制されているので、相手の土俵に乗らないことから始める必要があります。

そういえば以前、外国のビジネスパーソンから「私達は優位な立場で交渉を進めることを考えています。ビジネスジェットはその手段です。もちろん時間は大事なので短縮する意味もありますが、交渉に際して優位に運ぶための手段なのです。ですから交渉相手がもし定期便で来た場合は、最初からこちらが優位に立っています」と聞いたことがあります。

交渉事で先制されると劣位で話はスタートしますから、焦る気持ちから主張ができなくなっていきます。国際ビジネスの経験と相手を知っておかないと、不利な立場からのスタートとなってしまいます。

日本は組織で仕事をしているので「意思決定までに時間がかる」ことを知らせておくこと。しかし「待たせ過ぎ」と思わせないような流れをつくる必要があります。相手国のビジネススタイルを理解したうえで、日本の立場を理解してもらうこと。このネゴシエートがとても重要なことです。

でも交渉力は大事ですが「やはり人柄です」ということです。相手を立てながら、こちら側の主張をストーリーに組み込む調和を図ること。しかも西洋の場合、権限者、意思決定できる立場の人が直接交渉の場に出てくることが多いのですが、日本はそうではありません。交渉の途中で議案を一旦、持ち帰って権限者を含むメンバーで検討していく中で結論を導きます。意思決定をするまでに時間を要することが常です。

その差を埋めることは決して簡単なことではないと認識しています。言葉、ニュアンス、交渉術などによって変わっていくと思います。ただ和歌山県が掲げている令和3年度の目標は「世界」ですから、国際社会を知り対応していくことが求められていることです。向かわなければ、これまでと何も変わりませんから果敢に挑戦することです。

今この時に、和歌山県の将来を決定することもあり得る。と思いながら、何もしなければ現状のまま。結果は分かりませんが、やれば今よりも良くなると信じて向かっていくことにします。

こんなことを前提として外国との交渉に関しての会議を行いました。基本は相手のことを調査すること。こちらの条件を提示すること。そして経歴や依頼書など契約に必要なことを書面で提出してもらうこと。相手の調査することや経歴を証明する書類の提出を求めることは、欧米でも同じことなので主張すること。そして契約はお互いが自らの利益を最大にするための条件提示からスタートするもので、そこから条件を整えるための協議をすることになります。契約に至るまでには、何往復することも覚悟しなければならないと覚悟しています。