日本がデフレ不況に苦しんでいる間に、シンガポールでは平均賃金が2倍になっていることを聞きました。デフレ下の日本の平均賃金は上昇していないので、デフレが始まった時の平均賃金が20万円だとすると、現在も20万円ということになります。
このことから「インバウンドが増えた要因の一つとして考えられるのは、各国の平均賃金が上昇したから日本の物価が安くなっていると感じての訪日だと考えられます。日本に行けば品質の高い日本製品を安く買うことができることもインバウンド増加要因です」という話です。
日本がデフレ下でいる間に、特にアジアの国々は経済成長と共にインフレ傾向になり所得が上昇しているのです。そのため日本に旅行する機会が増加したことによって、日本経済に影響を及ぼしたというものです。
インバウンド観光はわが国の政策であり、日本に魅力があったことは事実だと思いますが、経済力の差が縮まっていることも要因だということです。昨日の経済情勢の話といい、インバウンド増加の要因といい、日本の経済力が低下していることを示していると思います。果たしてこの現状で良いのかと疑問に思いますが、多くの人は現状を変えるための政策提言や実行することの難しさを分かっているので、現状の体制維持で仕方ないと思っているのが現実です。「現状が駄目だと思う人は、代替案を示さなければならない」ということです。
代替案を示すことで国民を納得させ、実行に移せる人がいない限り、現状維持が続くことになります。その行きつく先は国際経済の方向性によってどうなるか分かりませんが、日本の金融資産が目減りすることに向かう可能性はありそうです。優良な投資案件があれば低金利で借り入れを行い、数パーセントの利回りを得ることが資産防衛の一つとなります。
ところで日本経済が低迷している原因を教育の視点で考えると教育のあり方の見直しの必要性も浮かび上がってきます。
わが国の教育も日本のシステムと同じように例に漏れずに護送船団方式できています。この方式は平均値を高めることに資するのですが、国のリーダーになるような突出した人材を輩出する機会を失わせてしまいます。全ての人を押し上げることは理想ですが、そのためには全ての人にある程度の理解をしてもらうためには教育に時間がかかることになります。過半数以上の理解を得てから教育を先に進めることは平均値を押し上げますが、既に理解している人の成長速度を弱めてしまうのです。
授業内容を理解している生徒は先に進む教育ではないので、学校の飛び級制度を採用している国と比較して突出したリーダーが誕生しにくいのです。勿論、全体の学力を高める教育を否定するものではありません。過去の護送船団方針によってわが国の教育水準は高く、国力を高めることに成功しました。ところがこれまでにないような技術革新の時代に入り、世界レベルの技術者や発明者、起業家が求められるようになりました。平均値よりも一科目でも良いので世界レベルの最高点を取れる人材が必要となっています。
今は護送船団方式の教育と共に、リーダーを輩出できる教育の両方について考える時期になっていると思います。間違わないで欲しいのは、これは切り捨てではなくて全体の平均値を維持する教育と共に、個々の能力を生かし高めるための教育も考えるべきだということです。
金や原油といった価値の裏付けのない通貨が流通する時代になっています。価値の裏付けのない通貨とモノのバランスが崩れてしまうと、通貨の価値が下がり、モノの価値は上がるインフレの時代に入っていくことになります。幸いわが国は供給力があるためハイパーインフレにはならないと思いますが、給与所得が上がらない状態でインフレが続くと、給与所得者の生活は苦しくなります。言い方を変えると、給与が上がらなくても物価も上がらないので生活が出来ていますが、給与が上がらないのに物価が上昇するようになれば、当然に生活は苦しくなります。
これまでのように輸出によって外貨を稼ぐ国でいるためには技術者、研究者、起業家の登場が必要です。そこには教育の重要性は高まっていると考えるべきです。
コロナ禍における経済対策は将来を考える機会となっています。この時期、経済対策、教育、国のあり方などを考えてみたいものです。