活動報告・レポート
2021年1月9日(土)
危機を考える
危機を考える

和歌山市に本社があり、首都圏などでも事業所のある経営者が話していた意見を聞かせてもらいました。コロナ禍における経済情勢についての話です。

「もう多くの人が分かっていると思いますが、コロナ禍が治まった後、今後はインフレに移行していきます。日本だけではなくて世界的にもインフレ傾向になると思いますが、その兆候は食糧危機だと考えています。食料は蓄えることが出来ないので、表面化すればやっかいなことになります」という意見です。

言うまでもなく、わが国の食料需給率は低いので、最も影響を受けやすい国です。中国での食料危機が輸出国に波及する事態になれば、当然、わが国の物価は上昇しますから、インフレの引き金になることが予想できます。中国初の食糧危機は世界に影響するので各国は自国の防衛に入ります。食料の輸出国がそれを止めることで影響を受ける国の一つが日本なのです。小麦粉などは仕方ないとしても、農産物の生産を緩めないこと、食料自給率を意識して今から備えたいと思います。

食料需給率が低いことと同様に、わが国は電力需給率も極めて脆弱です。自前のエネルギー資源を持たないわが国は、二度の石油危機や原油価格高騰の経験から、自前のエネルギーを持つことを目指していきました。国産エネルギーを持つことを目指し、電力需給率を高めることに取り組んできました。しかし現在のところ、電力需給率を高めるための計画は挫折しています。

さてこの冬は寒波による冷え込みが激しいので、暖房需要が増えていることから、特にここ数日間は電力不足の状態に陥っています。電力会社間の融通や石油火力の稼働、また自家発電設備を有している企業の発電を最大化することなどによって停電の危機は免れていますが、今冬は電力危機にあることは事実です。

石油火力や石炭火力の縮小、または廃止や原子力の停止が今後とも続くとすれば、厳寒の冬や猛暑の夏などは電力不足の状態が続くことは容易に予想できます。電力設備を所有している電力会社は、供給体制を維持するために融通などの調整を行って危機を乗り切っていますが、需要が供給力を上回ってしまうと調整の余地はありません。食料危機と共に電力不足などエネルギー危機も考えておきたい課題です。どちらも国内の需給率が低いことが特徴です。

コロナ危機と共に今ある危機を拾い上げて、将来のあり方を考えたいところです。危機が現実のものになる前に関係者は懸命の取り組みで調整していますから、危機が表面化していないだけです。平穏な日を維持している関係者の見えない取り組みを、私達は知っておくべきだと思います。わが国で平和を謳歌できることは素晴らしいことですが、それを維持している人たちがいるのです。外交、防衛は勿論のこと、食料やエネルギーの確保に努めている企業や関係者、コロナ禍における医療従事者の方々の懸命な取り組みを知って、私達は潜んでいる危機を意識することと人に迷惑を掛けない行動を実行することで、この社会、国を護りたいと思います。私達の意識と行動が危機を乗り越える、そして社会を護ることに直結しているのです。

もしも食料危機と共にエネルギー危機が現実のことになると、限りなく国力の低下につながります。食料もエネルギーも自国で生産できることが社会を維持することであり、国力を保つことに他ならないのです。食料もエネルギーも他の国に任せている。直ちにあり得ないことですが、更に大国が対立していくとすれば、世界が恐慌に向かうとすれば、わが国にとってとても危険なことだと思います。

食糧確保と農業の生産性向上は言われていますが、エネルギー需給率の低さは知られていないか、国策によって事業者の力を弱めている状況です。電力を生産していない電力事業者が増えてもわが国のエネルギー需給率は高まりませんし、わが国のエネルギーの脆弱性は一向に解決しません。むしろ基幹産業である電力業界を弱めてしまい兼ねません。

コロナ禍、大国の対立、厳冬の中での電力不足の問題、そして食料危機が予測されている現状から、わが国の課題となっているこれらの危機を考える契機にしたいと考えています。