活動報告・レポート
2020年12月30日(水)
教師の役割
教師の役割

今年最終となりますが、教育関係者と懇談する時間をいただきました。年末の時期にも関わらず、時間を確保してもらったことに感謝しています。

さて教師の役割は大変なことは理解していますが、授業や学力向上以外の役割の比重が高くなっているようです。クラス運営、学校運営、保護者や地域とのつきあいは大切になっているので、そのためには経験がとても大事なことが分かりました。教師というよりも、社会人としての経験が対応に必要なスキルになっているのです。トラブルやクレームに対して正面からぶち当たるようであれば、初期対応次第で問題は大きくなりますから、同様の事例を経験していることなど、学校以外の社会経験がモノを言うようになっています。

若い先生や生徒指導の先生に生徒に関わる問題が発生したとします。保護者と対応する事態になった時、経験が乏しいと不安になりますから、うまく事態の収拾につながらないことがあります。そんな時、管理職の先生が「心配するな。話し合って解決が難しくなった場合は、いつでも呼んでくれたらいい。校長室に待機しているから安心して話し合いをしてくれたらいい」と言葉をもらったなら、先生は安心して話し合いの場で意見を言うことができるのです。不安を抱えたまま話し合う場合と、安心感を持ちながら話し合いに挑む場合とは気持ちが違うので、結果にも影響を与えてしまいます。責任者の役割は、安心して問題への対応に当たらせる環境を整えることです。

また教師が生徒に与える影響についても聞かせてもらいました。この教師が某中学校でA君の担任を受け持っていました。今から随分と前のことです。後にA君は教師を目指して高校を選び、そこから教育学部に進学しました。大学卒業後、A君は教師になっていますが、専門は社会科でした。

ある年、この先生が当時の中学校のクラス同窓会に招かれました。会場でA君に会ったので、尋ねました。

「志望していた通り、頑張って教師になったようですね。おめでとう。ところで君は全ての科目の評点は5だったけれど、どうして社会科を選んだのですか。君なら数学でも英語でも、どんな科目でも教えられると思うけれど」。

A君は「それは先生の影響ですよ」と答えたのです。「先生の社会の授業がとても楽しくて、先生は授業の中で僕たちを世界中のあらゆる国に連れて行ってくれました。教室にいながら世界を旅できたので、僕も先生と同じ社会の先生になって、生徒に世界の素晴らしさを教えたいと思ったのです」と答えたのです。

先生はこの答えにとても喜び「僕の子ども達への授業は間違っていなかった」と振り返ったのです。授業で教科書と通り教えるのではなくて、想像力を湧き立てるような授業にすることで楽しく学べ、大人になっても消えない記憶として定着します。そんな授業が生徒の人生の方向を決定したのですから、教師冥利に尽きると思います。

そんなA君も59歳になり、現在は和歌山市内の学校で校長先生をしています。僕も何度か会っていますが、親しみやすくて熱心で、生徒が生き生きと、地域の方が気軽に学校に来てもらえるような学校運営をしています。A校長の熱意と思いやり、そして能力によるものだと思いますが、その背景には恩師の教えが影響しているように感じました。

こうして先輩から後輩への良い伝統は引き継がれていくのです。きっとA校長の生徒との接し方や学校運営の方法を直接、経験している先生達は、そのやり方を学んでいると思います。受け継がれてきた伝統は、次の時代にも継承されることになるのです。

年末の時期、教師の役割について、伝統を継承することなどの話を聞かせてもらいました。今年もたくさんの経験談を聞かせていただき、ありがとうございました。