活動報告・レポート
2020年11月18日(水)
恩と徳
和歌山県の産業

かつて和歌山県は電力移出県であり、和歌山県の産業は電力という時期がありました。火力発電の出力は390万kWもあり、京阪神で消費するために移出していたのです。国からkWhに応じて電力移出県交付金もあったので、確かに電力という加工品を生み出していました。

ところが近年は環境保全とコストの優位性が失われていることから、化石燃料に頼らない電力を優先させる時代になっています。将来を見渡しても、2050年にはカーボン・ニュートラルを目指すことになっていますから、火力発電の比率は低下することは必然です。和歌山県が電力移出県だった時代は過去のものになりつつあります。

しかし電力を運ぶための設備はありますから、この資産を活用することを考えたいところです。和歌山県は再生可能エネルギーの導入を目指していますから、これらのエネルギーを活用して電力を作り運ぶことは既設の設備を生かせる産業なので、活用を図ることも県政としての検討課題です。もちろん地域との共生は当然なので、地元の産業と共存できる関係である必要があります。

海流発電や洋上風力など次世代型の大規模な再生可能エネルギーの導入も県政で検討すべき課題だと考えています。和歌山県は企業誘致と雇用の確保など、産業をつくることが必要なので、可能性のあるものは検討すべきです。大規模再生可能エネルギーや水素製造、人工衛星、医療やAIなどが新しい産業に該当すると思います。

現在進めているロケット射場、南紀白浜空港の新ターミナル建設、統合型リゾートの推進、ICTオフィスの設置などと共に、その次の将来性ある産業を誘致したいと考えています。

恩と徳

若い経営者の苦労話をその友人から聞かせてもらい感動しました。

彼が小学校の時、父親の会社が倒産しました。ある日、家に手形の支払を求めて金融業者が来たのです。母親はもちろん、幼い彼も知らなかったのですが、手形は2億円を超える金額でした。とても支払える金額ではなかったので自宅を売却、貯金も全て支払いに充当したのです。

その時、彼は「この分は僕が取り返すから」と母親に話したそうです。それから約30年近くが経過しています。彼は会社を設立して売り上げを伸ばしています。今ではその金額であれば支払える規模の会社になっています。それでも母親のため毎月、手形の残金の返済を続けているのです。残金の一括返済をしないのは、あの時の気持ちを忘れないためです。

また会社を興した時、運営するのに苦しい時期がありました。どうしても期日までに返済しなければならないお金が300万円ありました。その時、同じビルに入居していたIT会社の社長が、彼の困っている顔を見て話を聞いてくれたのです。その社長は300万円を彼に「これ返さなくてもいいから。自由に使ってくれたらよい」と渡してくれたのです。そのお金のお陰で会社は立ち直り、その後は順調に業績を上げて今に至っているのです。

そしてその後、彼の会社は成長を続け、支援してくれたIT会社は業績不振に陥ったのです。IT会社の社長は何も言わなかったのですが、彼は社長のために毎月100万円ずつ支援しているのです。もう余裕であの時、支援してもらった300万円を超える金額を支援しています。それにも関わらず毎月、支援し続けているのです。

彼に「もう300万円はもちろんのこと、それ以上のお金を支援しているようですが、もう充分恩返しをしたのではないですか」と尋ねました。彼は「そんなことはありません。あの時の300万円がなければ今の僕も、この会社もなかったのですから。あの時の恩返しは一生続けます」と話したのです。

更に驚くことに、そのIT会社の財務状況が悪化した時に資金提供をしていたのです。しかもIT会社の社長はそのまま社長で、彼は「ずっと社長を続けてください」と立場が逆転した今も、社長へのご恩を忘れないで支援しているのです。

この話を聞くだけで、彼は心から信頼できる人物であることが分かります。人とのつきあい方によって信頼できるかどうか分かります。このように彼の会社が発展を続けているのは、徳があるからです。人にとって大切な徳は人と会うことで生まれるものです。徳がある人は人と会っていますし受けたご恩を忘れないばかりか、何倍にもしてお返ししています。それが徳につながっているのです。

徳は人が運んできてくれる。そんな行動をしている彼は若いけれど立派な経営者だと思います。そんな彼が「片桐さんには必ず恩返しをします」と笑顔で話してくれています。徳のある人物からのその言葉を嬉しく思っています。