活動報告・レポート
2020年11月1日(日)
日本書紀編纂1300年記念講演会
日本書紀編纂1300年記念講演会
日本書紀編纂1300年記念講演会

令和2年、日本書紀編纂1300年を迎えています。和歌山県として歴史を学び伝えるために「日本書紀編纂1300年記念講演会」を開催しました。主催は和歌山県、和歌山県青少年育成協会、「陸奥宗光外務大臣の功績を教育に活かす実行委員会」が協力して講演会を行ったものです。

第一部は上野敦子さんが講師となり「日本書紀に学ぶ日本の心・・天地と宇宙のつながり〜和歌山に宇宙を呼んだ男、上野精一〜」と題して講義をお願いしました。

結論からいうと、日本人が持っている精神、その心は、有史以来、万物一体であり宇宙とつながっているということです。これは日本人なら誰でも持っている感覚で、西洋人は日本を学び現地を訪れないことには理解できない感覚だと思います。

もっというなら、月に行って地球全体を眺めた宇宙飛行士が持ち得た感覚だともいえます。奇跡の星、地球を見た宇宙飛行士が持ち得る感覚を、日本人なら遺伝子の中に誰でも持ち合わせているものなのです。最先端の科学で以て得られた答えを日本人は持っている。日本人は凄いと思います。アメリカのアポロ計画は1961年にスタートし、1972年まで継続されましたが、その間に宇宙に飛び立った飛行士が万物一体の感覚を感じて言葉を残しています。

日本書紀編纂1300年記念講演会

1971年、アポロ14号で月面に降り立った宇宙飛行士エドガー・ミッチェルは「青い地球に万物を動かす神の存在を感じた」と述べています。そして「暗黒の宇宙を前に月面に立った時、宇宙との一体感、というか体も精神も宇宙に広がっていくという恍惚感に突然襲われた。宇宙、月、地球、そして今生きている自分の存在は偶然ではあり得ない。宇宙空間での一瞬一瞬が創造的に感じた。宇宙万物を支配する何か、神とも呼べる存在なしに考えられないんだ」という言葉を残しています。

またアポロ8号と13号に乗船したジム・ラヴェルは次の言葉を残しています。

「我々は月を知ることで、実は地球について知った。遠く離れた月で親指を立てると親指の裏に地球が隠れる。すべてが隠れる。愛する人たちも、仕事も、 地球が抱える問題も すべて隠れてしまう。我々は何と小さな存在だろう。だが、何と幸せなのだろう。この肉体をもって生まれてきて、この美しい地球で人生を謳歌することができて」という感覚を伝えてくれています。

まさに日本人が持っている万物一体の感覚を、奇跡の星、地球を見た宇宙飛行士たちは身に着けたのです。万物一体の精神は争わないことであり、争わないことは従うことでもなく、負けることでもなく相手を同化すること。つまり違いを乗り越えて融合することにあります。上野精一さん流のやり方では「ニコニコしながら淡々と説得してしまう」。喧嘩をしないで理解を得てしまうのが日本人のやり方です。日本人の精神を理解している人は「日本人としての誇りを常に心に」宿らせているのです。

このことは芯がしっかりしているから、違いを受け入れられることに他ならないのです。多様性、柔軟性を持ち合わせ、和の心を有している日本人ならではの戦い方です。

このことを上野さんは次のような表現をしてくれました。

「理由を切々と伝え理解を得ること。このアプローチが取れるのは芯が強くぶれない忍耐力と持久力があるから。つまり自分の主張に自信と自信を支える根拠があるから。相手の攻撃を受け止められるのも心理強さと持久力があってこそ」ということです。日本人の特性である日本人の和の心と、そこに潜んでいるしなやかな強さを表現しています。

最後に上野精一さんが宇宙を目指した理由を紹介します。

「悲しい時、辛い時は顔を上に向けると、気持ちも上を向くでしょう。宇宙は人に上を向かせるから良いのです」。上野精一さんの場合、上を向くために宇宙がある。私達は自分の目的を目指すため上を向きたいものです。

日本書紀編纂1300年記念講演会

第二部は立谷誠一さんから「神武天皇が投げた剣」の講演をいただきました。白浜町に神武天皇が嵐を避けるために上陸した時、地元の方に親切に迎え入れてもらったことから自身の剣を与えたところ、地元ではご神体としてお祀りし、そこに太刀ケ谷神社を祀ったという言い伝えを詳しく説明してくれました。

僕も太刀ケ神社のことは今年になって知りましたが、知らせていない理由を尋ねたところ「熊野に向かう神武天皇の出立をひっそりと見送ったことが太刀ケ谷神社の由来です。その名を広く知らせることはしないことが地元の伝統だったのです」ということでした。

日本書紀編纂1300年記念講演会

但し、今では地元の神社のお祀りに参加する人は少なくなり、このままでは伝統を維持することが困難になっていることから「もう知らせても良い時期だと思い話をするようになりました」ということです。今日の講演も、話すことができる時期になったことから実現したものです。

第三部は臼井康浩さんの「記紀を学んだ偉人たち」の講演です。紀州藩主の徳川治宝、本居宣長、伊達宗広、陸奥宗光、そして坂本龍馬について話をしてくれました。

たくさんの学びを得て「日本書紀編纂1300年記念講演」を終了しました。

閉会にあたり謝辞を述べさせていただきました。

日本書紀編纂1300年記念講演会

本日は長時間の講演会に参加いただき感謝申し上げます。ありがとうございます。本日の主宰は和歌山県青少年育成協会、陸奥宗光外務大臣の功績を教育に活かす実行委員会がお手伝いをさせていただきました。

第一部は上野敦子さんから神話と宇宙について講義をいただきました。ここから日本人が持ち合わせている心は素晴らしいものであり、宇宙から地球を見た宇宙飛行士がその価値を得るぐらいのものだと気づいてくれたと思います。宇宙という科学と日本の神話。関係ないように思いますが、宇宙飛行士と日本人の持つ精神は同じだということです。科学を学んでいる生徒の皆さんも来てくれましたが、指導してくれている藤木先生はJAXAが認めた「JAXAスペース・ティチャーズ」です。とても素晴らしい先生に教えてもらっていることを誇りに思って下さい。先生は和歌山県の誇りだと思っているので、宇宙について、そして古典についても学ぶ機会になれば嬉しいことです。

そして太刀ケ谷神社についても知る機会になったと思います。僕も知ったのは今年になってからですが、これは日本書紀に記されていない口碑として伝えられているものです。口碑とは公伝、口述のことで、地元で語り継がれてきたもの、大切に継承されてきたものですから、地元の文化であり歴史です。記述されたものと同様の価値があると思います。

そして第三部では故郷の偉人の功績について学びました。陸奥宗光さんが不平等条約を改正してくれたことで近代日本が始まりました。現代の日本があるのは、この功績があったからこそです。この精神を知ってもらって、次は私達がこの国を背負っていきたい、背負って欲しいと思います。

最後に、来年は和歌山県誕生150年の年を迎えます。和歌山県が誕生したのはわずか150年前のことなのです。来年、和歌山の県の誕生日を皆さんと一緒にお祝いしたいと思います。

本日はありがとうございました。

とても清々しい講演会となりました。皆さんにお礼申し上げます。