北海道稚内市をエネルギー問題研修のため訪れました。これは今年8月以降、北海道寿都町と神恵内村で文献調査の動きがあったことから、その動向を含めて視察に出向いたものです。
まず寿都町は、法律に基づく段階的な処分地選定調査の文献調査への応募表明をしました。町長が住民説明会を開催し、町議会に応募表明を行い、その後、文献調査応募書をNUMOに提出したものです。
また神恵内村は、村商工会が村議会に請願書を提出したことから、村議会がNUMOに住民説明を要請しました。そこで国とNUMOが住民説明会を開催し、臨時村議会で商工会の請願を採択しました。議会採択があったことから国が村に文献調査の申し入れを行い、村長が文献調査受け入れを表明しました。村が文献調査申し入れ受諾書を国に提示しました。応募地方自治体が現れなかったのですが、令和2年9月に入ってからこのような動きが出てきました。
二つの地方自治体が名乗りを上げた理由は次のようなものだと聞きました。
寿都町は、町の経済対策として再生可能エネルギー推進に取り組んできました。風力発電や洋上風力発電の立地を目指しています。
また神恵内村は、人口が減少していることから、このままでは村がなくなってしまうことを懸念して、新しい産業誘致を目指したものです。村の人口は約820人で、危機感を持っての対策を考えていました。多くの人に来てもらいたい、住んでもらいたいと願って文献調査の受け入れを表明したものです。どちらも地方自治体の将来を考えてのことです。
まだ進んでいない段階ですが、既にふたつの地方自治体に対して風評被害につながる動きが出ているようです。「農産物や海産物を買わない」「北海道から出て行け」など匿名の投書や電話が来ていると聞きました。
これらの地方自治体が、まちの将来を真剣に考えて導いた判断を、経緯を知ることなく批判する行為はいかがなものかと思います。新型コロナウイルス感染症でも同じですが、悪意のある匿名批判が多く発生していることです。卑劣な匿名批判は日本人らしくないと思います。意見の対立による議論はよいことですが、匿名批判は相手がわからないことや批判だけで議論にならないことから、議論が前向かないのです。文献調査のあり方と共に議論のあり方も考えるべきだと感じました。
社会問題は、まず基本的なことと判断した人達の思いや、当該町村の現状を知ることから始まります。そのためには、専門家の意見を聞くこと、これまでの経緯を知ること、そして問題点を知ること、解決できない場合の対応をどうするのか考えておくことなど、自分なりに考えたいところです。社会に存在しているものが問題視されている場合、放置出来ないなら解決方法を導くための話し合いが必要です。反対だけでは社会問題は解決しないと思うので、この問題から、解決に導くための話し合いが必要だと思いました。
参考までに。法律に基づく処分地選定調査の概ねの期間は、文献調査は約2年、概要調査は約4年、精密調査は約14年、合計20年を要する調査になります。各段階で知事と町長、村長の意見を聴いて、反対の場合には次の段階に進まないことに決めていますから、まだ始まっていない段階での風評被害につながる行為はいただけないと思います。
またJR稚内駅前商店街を歩きましたが人通りが少なくて寂しく感じました。この商店街の中心になるのが「相沢食料百貨店」だと思いますが、ここには日常品を中心に商品が多数そろえられていますから、街に欠かせない存在だと思いました。
地方都市にあるかつて賑わった商店街は衰退していますが、ここでも同じような光景がありました。他と違うのはお店の入り口に店の名前がロシア語で書かれていることです。ここは港町ですから、かつてロシアからの買い物客が訪れていた名残だと思います。
元通りに戻ることは難しい取り組みだと思いますが、これからも地元の人にとって欠かせない商店街としての役割を果たして欲しいものです。