活動報告・レポート
2020年10月7日(水)
経済警察委員会視察の初日
妙中パイル織物
妙中パイル織物

経済警察委員会の県内視察初日です。県庁を出発して高野口町にある妙中パイル織物株式会社を訪ねました。高野口町は昔からパイル織物の町として知られています。自動車や飛行機などのパイル製品を製造していることで栄えてきましたが、現在は素材も変わっていることから新しい取り組みを行っています。その状況について妙中社長から説明と工場案内をしてもらいました。

妙中パイル織物は70年以上操業を行っている老舗であり、紀ノ川筋域を代表する企業です。製品は自動車や飛行機を始め生活関連諸品、インテリア、化粧品用の合繊パフ、パネル用のラビングクロスなどがあります。意外なことに衣料品は全体の10パーセントの比率に過ぎず、この理由は「パイル地の衣料品は秋と冬の2シーズンだけなので採算がよくない」ことだと聞きました。

また、主力製品だった自動車用の素材ですが、自動車メーカーが高級路線を目指してシート地に革製品、人工皮革などを採用していることから減少しているようです。一つの製品の寿命は以外と短いので、「常に新しい製品開発が必要」だということです。

ただし提案するというよりも、メーカーから新しい素材についての相談を受け、そこから製品化を検討する体制を取っています。これはメーカーの製品開発に合わせることと、市場の範囲が大きいので、ターゲットを絞ることなく開発しても無駄に終わるからです。

妙中パイル織物

工場案内をいただき、規模の大きさと工程の多さに驚きましたし、設備投資が大きな産業であることも分かりました。パイルは織込むだけでは製品にならないので、染色、水洗い、乾燥などの工程を経て最終、検品を行って出荷できるのですが、製品化までの時間と労力を感じ取ることができました。この工場を見学すれば、モノを大事にする気持ちが備わると感じました。子ども達には見学してもらいたいと思います。

さて社長からの話で気づきになったことを記載します。

自動車メーカーとの仕事をして感じたことがあります。それは納期は絶対に厳守、品質を保つこと。コストが厳しいので切り詰めることの三点です。

メーカーからの指示として納期は絶対です。納期遅れはあり得ないことで、遅れが発生することは取引がなくなることを意味しています。また品質にムラがあってはいけません。品質を保つことと検品体制整えることなど、品質管理の体制が整いました。そしてコスト意識です。バブルの時代と違って高いものは売れません。高品質で、かつ安価な素材が求められています。自動車メーカーとの取引で、そのことを学べたと伺いました。

市場規模が縮小している中での生き残りについてです。かつては市場規模が大きかったこともあり、同地域の同業者との競争が激しかったのです。取り合い、探り合いなどもあったようですが、現在は市場規模が縮小となっているので、取り合うほどの仕事量がなくなっています。そこで競争から共生の時代。争いよりも分け合いの時代になっているのです。

メーカーから素材の発注があった時、もし自社が不得意で他社が得意としている素材であれば、そちらに話を回すことや、共同して仕事を受けることなどの仕事のあり方を変えています。争いでは生き残れない、協同することで生き残れることを理解しているからです。

このような経営理念などを聞かせていただき、和歌山県の企業がメーカーとどうつきあっているのかを理解することができました。

バイオマス発電所
バイオマス発電所

続いて和歌山県初のバイオマス発電所「DSグリーン発電和歌山合同会社」を訪ねました。和歌山県の森林から伐採される間伐材や林地残材、建築廃材、そしてPKSを燃料とした発電所です。燃料比率は、順に5対4対1の割合です。運転開始は令和2年6月からなので、まだ実績が積みあけられていませんが、FIT価格が1kWあたり32円なので「採算ベースに合う」計算になっています。

発電出力は6,000kWで、世帯数でいうと約13,000世帯分を賄える規模になっています。

発電に必要な燃料は、年間約8万トンで、地元で調達ができることが経営的にも、森林組合との共生の面でも理想なのですが、現段階では全てを調達できないことから、初年度はPKSも約1万トンを輸入しています。地元での燃料調達が増えれば増えるほど採算性はよくなっていきますから、この発電所ができたことで受け皿ができたので、森林の間伐を進めるなど林業振興にもつながることを期待しています。

これまで全国の県でバイオマス発電事業に取り組んできた同社から見た和歌山県の森林は「森林の手入れがされていない。表現はよくありませんが、きたない山だと思います」と比較を伝えてくれました。それは作業道が狭いことから整備できていないことに起因しているものです。今後の課題として「作業道の整備を進めるか、森林をまとめるなど林業のあり方を見直す必要があると思います」ということです。

バイオマス発電所ができたことから、間伐材の買い取りをしてくれるので林業者にとって確実なビジネスになります。共生関係を築けると思うので今後の取り組み方を行政と共に考えたいものです。