活動報告・レポート
2020年10月4日(日)
缶サット甲子園2020和歌山地方大会
缶サット甲子園2020和歌山地方大会

昨日、元JAXA上野精一さんの話を聞きましたが「リーダーのあり方」について学ぶことがたくさんあります。昨日も書きましたが、まずは調整力です。人と人をつなげる、協議をまとめる、お互い納得できる形で結論を導く。これらは全て調整力の成せる業です。

外国との交渉は立場、言語、文化の違いなどの問題によって高い調整力が求められます。アメリカと日本が宇宙に関して協議を行う時に使う世界地図の話は参考になります。

欧米では世界地図は大西洋が真ん中に位置しているものを使用しています。大西洋の西側にアメリカ、東側にヨーロッパとなります。この地図だと日本は西の外れに位置しています。

そこで日本とアメリカの交渉の場なので、上野さんは「太平洋が中心に来る世界地図を使うこと」を提案しました。アメリカ側は通常使っている地図で問題ないことを主張しますが、上野さんは粘り強く話し合い「視点を変えることができるので新しい発想が生まれると思うよ」のニュアンスの提案を行い、シェイクハンドをしたそうです。

その後の同会議では太平洋が中心に来ている世界地図を使うようになったと聞いています。世界地図を通常、日本が使っているものに変えたのは、その後の交渉を有利に進めることに役立ちます。わが国が西の端にある国ではなく太平洋を挟んでアメリカと日本が対等に位置していることが分かるからです。対等な国として交渉に挑んでいることを悟らせることで、心理的有利に立つことができたのです。

ここで生きた能力が調整力であり粘り強さです。対立よりも協調、争いよりも平和。それが人と人をつなぐものです。

さて「JAXAスペースティチャーズ和歌山」の先生が道徳の授業用のプログラムを開発した時の話も聞かせてもらいました。

「あなたは宇宙飛行士です。任務を与えられ、宇宙基地で6か月生活をすることになりました。あなたは宇宙に自分の好きなものを一つだけ持って行くことができます。あなたは何を持って生きますか」

この道徳の設問に対して小学生は、自分の好きなものを探します。自分の好きなものを先生に答えるのですが、それでは自分一人だが楽しめるものであり、みんなで楽しめないことを理解します。6か月も宇宙空間にいるのだから、みんなが楽しめるものを持っていくことが共同生活では大事なことを理解します。

生徒達は、自分が好きなものと実際に持っていくものとは違うことを理解することになっていきます。数人の宇宙飛行士が、共同生活をするみんなで楽しめる道具をそれぞれ持っていけば、6か月、限られた空間で協調しながら過ごすことができます。社会では自分のことと同じように、仲間のことを考えることが大事だと知ることになるのです。

先生が生徒の心に火をつけるために必要なことは、元気にさせること、感動させることです。教育にはこの「inspiring」が必要なのです。

アメリカとの交渉や道徳の授業から気づくべきことは、自分に自信を持つことと誇りを持つことです。自信と誇りを持って仕事をする、交渉に挑むことが大事なことです。特に世界を相手にする場合、日本人としての誇りを持って挑むことです。それは自分の意見を押し切ることではありません。それぞれの意見、主張を聞いたうえで自分の意見との違いを考えて、話がまとまるように調整することです。主張するところ、譲るところの選択は感性が必要ですが、自身と誇りを持っていれば、まとめあげていくことは可能だということです。

今日「缶サット甲子園2020和歌山地方大会」が開催されました。これからの日本を背負う子ども達が活躍した一日です。それぞれの高校で缶サット開発に取り組んだ自信と誇りを持って戦ってくれました。高校生がこの大会に参加したことは、将来の自信と誇りにつながるものです。一気に自信と誇りは持てないと思いますが、小さな自信と誇りが核となって、続けることで徐々に大きくなっていきます。自信と誇りの塊を得た故郷の高校生達を、宇宙に命を賭けた上野精一さんは見守ってくれたと思います。