和歌山大学システム工学部の秋山教授を訪ねて講義をしてもらいました。秋山先生といえば宇宙ですが、今回は「地域の皆さんの安心と安全のための河川のリアルタイム情報の提供システム」について説明を聞かせてもらいました。河川の水位を計測するために国や県、市町は水位計を取り付けています。しかし水位計は高価なので設置個所が限られています。水位計の取り付け数が少ないため、広範囲の地域の方に避難勧告を発令していることになります。避難勧告が発令されても避難者が少ないのは、「自分の地域は大丈夫」と思う方が多いからです。河川の水位が上昇しても、河川のどの地点の水位なのかによって避難判断が違ってきますから、広範囲に避難勧告を発令しても逃げないのは「その地域内であっても安全だ」と思う人が多いからです。つまり勧告範囲が生活圏と比較して広すぎるため実際の非難に結び付かないのです。
水位計の設置個所を増やすことができれば、避難勧告の範囲を狭めることができるのですが、高価なため実現できないのです。そこで考えられたのが「住民設置型簡易水位計」の提案です。
この水位計は安価であり、地産地消の産業化にもつながるシステムなのです。
今回、和歌山県と和歌山市、そして御坊市は公的な水位計と共に私的な水位計の設置と周辺住民へのデータ公開を公式に認めたのです。これは国内で初めてのことだと説明してくれました。これが契機となり、中央のコンサル会社を通さない地産地消による住民設置型水位計が実現に向かうことを期待しています。
秋山先生がこの水位計のシステムを訴えているのは、宇宙開発の基本に基づいているからです。それは一つで全てが安全安心はあり得ない。「公助」「共助」「自助」による複合的な手法で、本当の安心安全を。という「冗長設計」の考えに基づいているのです。
この水位計は「LoRa衛星」を活用したものですが、このシステムは現在使われているシステムと比較してデータ容量が小さいので、携帯電話などでは採用されていません。しかし安くて電波の届く距離が長いことから、上空であれば衛星にまで届くのです。通信料がショートメール数通程度であって既存の通信回線を圧迫しないので、災害時には活躍してくれるものだと思います。
この地産地消のデータ利用というスタイルはわが国では馴染みがない取り組みですが、EU諸国では活用されていることも聞きました。
和歌山県でのIR公募に応募している事業者の一つが「サンシティグループ」ですが、和歌山県事務所を開設することになりました。今日、内覧会の案内があったことから行ってきました。
このグルーブはマカオを拠点としたエンターテイメント企業で、和歌山県での事業化に向けた企画を実施しています。考え方は「和歌山の地に世界でも類を見ない統合型リゾートIR2.0の誕生」です。
ホテルは和歌山城をイメージしたもので、和歌山県の歴史と文化を大切にしながらエンターテイメントを提供する考えです。
第一次計画の段階ですが、想定している雇用人数は約1,600人、経済効果は約3,000億円、開業目標は2025年となっています。尚、この数字は今後の事業計画修正、国の動向によって違ってくることをご了承下さい。
雇用は地元和歌山県からを期待していますが「もちろん、その予定ですが、採用予定人数が多いので、県外からも採用することはあり得ます」ということです。和歌山県にとって観光業への人材育成も課題となります。事業者からは「今後は、和歌山大学観光学部とも連携したいと考えています」と話してくれたように、地元人材に大きな期待をしてくれています。この機会を生かすことを考えたいと思います。
また和歌山県には潜在能力があり、IRを通じてその魅力を世界に発信すること、その結果として「和歌山県は世界に誇れる県である」と思ってもらえることを目指していることを説明してくれました。
「和歌山県を誇れる県にする」ことは僕も目指している姿ですが、それが目指すべき姿であると話してくれたことを嬉しく思います。歴史と文化を大切にしてきた和歌山県ですが、エンターテイメント企業がその魅力を世界に発信してくれようとしているのです。改めて私達は和歌山県の歴史と文化を護り続ける必要を感じました。
IRもわが国にとっての新産業だと思います。サンシティグループの提案がどんなものに仕上がっていくのかを注目しておきます。